秋吉理香子の作品を読むのはこれで3冊目。
1冊目、2冊目が気に入ったから3冊目を読んでみた…と言う訳ではなくて、図書館でなんとなくジャケ借り。
耽美な表紙はロマンティックなタイトルから「もしかして、ゴシックホラー?」と予想した。
鏡じかけの夢
- ヴェネツィアから流れ着いた一枚の鏡。その鏡は持ち主の願いを現実のものにすると言い伝えられていた。
- 脳病院に身を置く奥様と看護婦。昔気質な鏡研ぎ職人と美青年。人気舞台女優と財界の黒幕当、鏡は次々と持ち主を変えて渡り歩く…
感想
内容はほぼ予想通りのゴシックホラーだった。
好きな人は好きだと思うけれど、普通のミステリを読みたい人は辞めておいた方が良いと思う。
個人的にはそこそこ面白かったのだけど、いかんせん少女漫画をノベライズ化したような作風なので、ガチもののミステリファン、ホラーファンには物足りない気がする。
漫画の話を引き合いに出して恐縮だけど、この作品の雰囲気は往年の名作少女漫画『悪魔の花嫁』そのものだった。
連作短編形式だけど、1つ1つの物語はそれぞれに完結していて場所も時代も微妙に違う。どれもこれもが耽美な感じで「あしべゆうほにコミカライズして欲しい」と思ってしまった。
『悪魔の花嫁』の漫画が流行した時期は女の子達の間でホラー漫画がちょっとしたブームだった。
ホラーと言っても色々なジャンルがある訳だけど、当時の女の子達に人気だったのはお金持ちが出てきたり、外国が舞台だったりする「ちょっぴり耽美でロマンティックなホラー」だったように思う。
「ああ…分かる」とうなずいてくれた人は、きっと松本洋子とか好きだったのではなかろうか。
連作短編形式でどの作品も耽美な雰囲気でテーマは愛憎。「愛ゆえに…」みたいな話ばかりなので、少女漫画のノリが苦手な紳士達にはついていけない世界だと思う。私はかなり好きだけど「少女漫画ちっくだなぁ」とは思った。大人の読み物として読むには少しキツイ。
前回読んだ『婚活中毒』や最初に読んだ『聖母』とは雰囲気が全然違っているので、この作家さんの作風がイマイチ掴めていないのだけど「他の作品はどんな感じなんだろう?」と興味を持ったので、気が向いたら他の作品もチャレンジしたい。