我が家は基本的に「米飯人」なので、台所にパンがストックされていることが少ないのだが、今日はなぜかロールパン置いてあった。
しかもスーパーで売っている袋入りのパンではなくて、ちゃんとしたパン屋さんで買ってきたであろうロールパンである。
そして私はパンをみると『アンパンマン』と、この作品を連想してしまう。これは幼少時における刷り込みが原因だと思われる。
美味しいパンの思い出よりも、楽しい「パンが主人公の本」の思い出の方が勝っていた……ということだ。
からすのパンやさん
カラスの町「いずみがもり」にある、1軒の売れないパン屋さん。
お父さんお母さん、4羽の子ガラス、家族みんなで、楽しい形のパンをどっさり焼いた。
パンを買いにやってきたカラスの子ども、おじいさん、おばあさん、そしてなぜか消防自動車、救急車、テレビのカメラマンまでやってきて森は大騒ぎに…。
アマゾンより引用
感想
本の内容は、題名そのままで「からすのパンやさん」の繁盛記である。
パン屋さんは、カラスの夫婦が経営しているのだが、夫婦に4つ子の赤ちゃんが生まれるところから、お話ははじまる。
4つ子達は、なぜだか身体の色が「カラス色」ではないのだが、夫婦は子供達を大切に養育するのだ。なんか「ちょっと、いい話」ではないか。
絵本の中といえど、子供は愛されて大きくなる方が良いに決まっているし。
夫婦のパン屋さんは、子育てが忙しすぎて商売が上手くいかなくなっていく。
で、その打開策として「色々な形の面白いパン」を売り出して危機を乗り切る話なのだが「色々な形のパン」というのが、面白くて心をそそるのだ。
子供の頃、百貨店の地下食料品売り場にあるようなパン屋さんで「動物の形をしたパン」を見ると、必ずと言っていいほど「買って」とねだってみたものだが、あのトキメキを彷彿とさせるようなパンなのだ。
動物の形をしたパン。日用品の形をしたパン……そのパンが美味しいとか、美味しくないとか、そういう次元を超えたところで「食べたい」と思ってしまうようなパンなのだ。
ちなみに、子供の頃にねだって買ってもらった「動物の形をしたパン」は、美味しいものではなかったように思う。
あれは食べるものというよりも「楽しむもの」の要素が強いパンだったのだろうなぁ。
それにしても、子供の頃って「○○の形をした□□」っていうのがどうして、あんなにも好きなんだろうなぁ。
タコさんウィンなーとか、ウサギリンゴとか。私など、いまだに「動物の形をしたパン」ほ欲しいと思うことがある。そんなに美味しくないのは分かっているにも係わらず。
かこさとしの作品は「これ欲しい」とか「これって好きなんだよね」とかいうものが、たくさん出てくる。
かこさとしは楽しいことを探すのが、よほど好きな人なんだろうなぁ。そして、子供が好きなんだろうなぁ。そうでなければ、こんな作品は書けないだろうと思う。
明日の朝はパンを食べる。面白いパンではなくて、なんの変哲もないロールパン。だけど、この作品を読み返したおかげで、いつもより、美味しく感じるんじゃないかと思う。
それくらい「パンが食べたい。パンって、いいなぁ」と思える1冊なのだ。