初めて読んだ『石の目』が良かったので、続けてこれも読んでみた。
図書館のホラーの棚に並んでいたし、猟奇殺人を扱った連作短編集なので、心ときめかせて読み始めたのだが……ぬるい。ぬる過ぎる。
こんなので猟奇なんて言葉を使って欲しくはないな。ちゃんちゃらオカシイ。
ぶっちゃけ、つまらん。
GOTH
森野夜が拾った一冊の手帳。そこには女性がさらわれ、山奥で切り刻まれていく過程が克明に記されていた。
これは、最近騒がれている連続殺人犯の日記ではないのか。もしも本物だとすれば、最新の犠牲者はまだ警察に発見されぬまま、犯行現場に立ちすくんでいるはずだ。
「彼女に会いにいかない?」と森野は「僕」を誘う…。人間の残酷な面を覗きたがる悪趣味な若者たち―
アマゾンより引用
感想
主人公は殺人に興味深々で、自分自身では犯罪を犯していないのだが、いつ人殺しをしてもオカシクないようなクレイジーな男子高校生。
ヒロインも、拷問だの猟奇だのが大好きな風変わりな少女。
設定的には「萌え」だったが、この2人、設定的に凄いわりには、読んでみると、すごくもなんともない。
1つ1つの話はそれなりに面白いが深みに欠ける。魂の叫びが聞こえてこないのだ。
悪いが「しょせんジュニア小説上がりの作家の書いたものだね」としか思えなかった。
救いのなさや、どうしようもないやりきれなさを全く感じることができなかった。こういう話は漫画でやってもらいたい。
世間的には、かなりキワドイ小説だと評価されているらしいが、私に言わせると佐藤ラギの『ギニョル 人形』の足元にも及ばないと思った。
人には誰しも「それを言っちゃあオシマイだ」」とか「それをやっちゃあ人でなくなる」なんて衝動を持っていると思う。
その衝動は、暗くて深い。そしてポイントは「誰しも持っている」ということだ。もちろん、その度合いは人それぞれに違っていて、すごく濃い人もいれば、淡白な人もいる訳なのだが。
作者自身、あとがきで「ミステリをないがしろにしてきた」と書いてあったが、このテの作品は向いていないんじゃなかろうか。
ネタ的には充分過ぎるほど素敵だったが、食い込んでくるものが無く、小手先だけで書かれた作品という印象を受けた。
文章はそこそこお上手だと思うのだが。意気消沈してしまったが、とりあえず、もう1冊読んでみようと思う。