盛田隆二の作品を読むのはこれが初めて。図書館で見つけて題名に惚れた。
少し前に読んで気に入った『彼方の友へ』が第二次世界大戦中を描いていたので続けて読んでみようかと。
作者の両親を描いた作品で父は通信兵で母は看護婦(今は看護師表記だけど当時の呼び方に合わせている)。
現代から昔を振り返りつつ、それぞれの生い立ちから出会いについて書かれている。
焼け跡のハイヒール
戦争に翻弄されつつも、数奇な運命に導かれ、鮮やかに輝いた青春があった―。東京大空襲からわずか三週間後の昭和二十年四月一日。
上京した十四歳の美代子は、新宿の看護婦養成所に入学した。「お国のために働きたい」と勉学に励む美代子だったが、激化する空襲に、現場はたちまち野戦病院と化していく。
同じ頃、二十三歳の隆作は、通信兵として大陸を転戦していた。だが、壮絶な行軍の末、体調に異変を来してしまう…。
アマゾンより引用
感想
盛田隆二の他の作品を読んでいないので何とも言い難いのだけど、この作品はちょっと酷い。なんと言ったら良いのだろうなぁ。自費出版の自伝感が半端ない。
エピソード自体は面白いし何しろ第二次世界大戦中の話なのでドラマティックではあるのだけれど「事実をそのまま並べました」な感じが凄くて小説としては稚拙な感じ。
書いている事は凄いのだけど、読んでいてしんどくなってしまった。正直、途中で読むのを辞めようかと思ったレベル。
父のエピソードにしても母のエピソードにしてもそれぞれ面白いし生き様に共感出来るところもあるのだけれど、家族のエピソードを寄せ集めた文集みたいになっているのが残念でならない。
父か母のどちらかを主人公ににするとか、せめて恋愛に焦点を絞るとか書きようはいくらでもあっただろうに、最初から最後まで書いている上に彼らの老後の話まで盛り込んでいて、これをプロの書いた小説として読むのはかなり苦しい。
親戚の法事で長々と昔話を聞かされたような錯覚を覚えた。
戦中戦後の大変な時代を生き抜いた人には敬畏を評したいと思うし「戦争中は大変だったんだなぁ」とも思う。
当時の日本人の強さとか学ぶべきところは多いのだけど、いかんせん小説として読むには無理がある。
葬儀で配られた故人の書いた自伝だったらアリだけど、プロの書いた作品とは思えないほどのとっ散らかり用にウンザリしてしまった。
最期まで読んでみたものの、盛田隆二の書いた他の作品を読みたいとは思えなかった。