竹久夢二や中原淳一が活躍した少女雑誌『少女の友』を発行していた実業之日本社創業の120周年記念作品。
この作品はあくまでも小説だけど作品の背骨になっている雑誌『乙女の友』はかつて少女たちが夢中になった『少女の友』をモデルにしている。
少女小説が好きだった元少女の達に是非読んでいただきたい。私自身は『少女の友』を知らない世代だけれど、中原淳一の絵や吉屋信子の小説にハマった時期があるので胸熱な内容だった。
彼方の友へ
平成の老人施設でまどろむ佐倉波津子に、赤いリボンで結ばれた小さな箱が手渡された。
「乙女の友・昭和十三年 新年号附録 長谷川純司 作」。そう印刷された可憐な箱は、70余年の歳月をかけて届けられたものだった。
昭和初期から現在へ。雑誌の附録に秘められた想いとは―。
アマゾンより引用
感想
主人公は『乙女の友』の主筆を務めた佐倉波津子。なんと彼女は高校へも大学へも通うことなく、雑用係から『乙女の友』の主筆を務めることになる。
それはシンデレラストーリーでもあるし、朝ドラで一世を風靡した『おしん』的な物語でもある。
学歴も自信もない少女が頑張る物語で「朝ドラかお正月特番で映像化して欲しい」と切に思った。朝ドラにするには乙女度が高過ぎるかも知れないけれど、イッキ読みしてしまう面白さだった。
勢いで読ませるタイプの作品で雑と言えば雑な作り。朝ドラ、大河浪漫のノリが好きな人には楽しめると思うけれど、ガッツリと文学を求める人にはオススメしない。
「この後、ヒロインはどうなっていくんだろう?」と言うドキドキ感を味わうタイプの作品でヒロインに肩入れする事が出来れば最高に楽しめると思う。ちなみに私は思い切り楽しませてもらった。
物語はヒロインの佐倉波津子が老人施設で暮らしているところからスタートする。
70年の時を経て「ある物」がヒロインの元に届けられるのだけど、ベタベタに臭い展開で素晴らしくグッっときた。純愛と言うかなんと言うか。
ロマンティックが極まり過ぎて乙女ちっくな小説が好きな人にはたまらぬ展開だと思う。
この作品は乙女心を持ち続けている大人の女性がキュンキュンするのにもってこいの作品だと思う。
また本や雑誌が好きな人にも読んで戴きたい。また、雑誌を作る人の情熱とか熱さきグッっとくるものがある。
久しぶりに小説を読んでキュンキュンしてしまった。
ちなみに私が伊吹有喜の作品を読むのはこれで2作目。前回読んだ『カンパニー』は宝塚で舞台化とのことだけど、これも宝塚化出来そうなノリ。
『カンパニー』は生臭感が鼻についてそこまで好きになれなかったけれど、この作品はかなり好き。次回作を期待したい。