エマ・ワトソン主演で『美女と野獣』が映画化されている事を受けて、再読熱が猛烈にたかまり、久しぶりに本棚から引っ張り出してきた。
私がはじめて『美女と野獣』を知ったのはジャン・コクトーの白黒映画。
小学生の頃、ローカルテレビ局で日曜日の昼間に放送されているのを観て夢中になった記憶がある。
美女と野獣
そまつな服を着て、このうえなくみじめなくらしをつづけながら、娘たちはいつも、むかしのぜいたくで楽しかった生活をなつかしんでいました。
ただ末娘だけは、明るく、強く、生きようとしていました。
彼女は、父親がはじめて不幸に見舞われたとき、だれよりもなぎけ悲しみました。
けれども、もちまえの快活さを取りもどすと、つらい生活にたえて、仕事に取りかかって、父親や兄さんたちをできるだけなぐさめようとしたり、姉さんたちの気持ちが、歌やダンスでまぎれるようにつとめるのでした。
ボローニャ・ブックフェア特別賞受賞のシリーズ。
アマゾンより引用
感想
ジャン・コクトーの映画を観た当時はそろそろ幼児絵本に登場する「お姫様」には物足りなくなっていた自分だったので「私の求めていたお姫様の世界はこれだ!」と感動した記憶がある。
ジャン・コクトーの『美女と野獣』は実に美しい映画で最高だった。
惜しむらくはラストで野獣が人間に戻り、かぼちゃパンツをはいた王子が登場した場面だけだろう。
かぼちゃパンツの王子様はかぼちゃパンツ慣れしていない私の目には滑稽な物でしかなく「これなら、ずっと野獣でいてくれた方がずっと良かった」とガッカリしたのだけれど、あれはあの映画を観た日本人女性の総意であると信じて止まない。
さて。昔話はここまでと言うことで本の感想など。
『美女と野獣』については色々な出版社から絵本が出ているのだけど、私が持っているのは西村書店版。大人になってから購入した本で文章が1番しっくりきたので、これを選んだ。
幼児向けの簡易版でなければ、どの本を選んでも大差なさそうに思うのだけど、当時は「これが運命の1冊だ!」くらいの勢いで購入した。
久しぶりに読んでみたけれど『美女と野獣』はロマンティックの極みだと言っても良いと思う。
美女と野獣。お城にバラに呪い。不思議な夢。おとぎ話のロマンティックな部分が全部詰め込まれていると言っても過言ではない。
主人公のビューティは醜い野獣と1つ屋根の下暮らすことになるけれど、野獣は決して乱暴ではないってところがグッっとくる。
ヒロインにとって野獣は乱暴な主ではなく、むしろヒロインの哀れな下僕というポジションなのが最高だ。
ちなみに。西村書店版の絵本では野獣から変身した王子の姿は絵として描かれていない。私ははじめて子の絵本を手に取った時「分かってらっしゃる!」と感激した。
物語の『美女と野獣』とディズニーアニメの『美女と野獣』では微妙に解釈が違っている。
原作はあくまで「おとぎ話」であるのに対して、ディズニーアニメは「ドラマ」として、原作に様々な要素(枯れない薔薇とか村人の襲撃とか)を付け加えている。
細かいところを書き出したらキリがないけれど、ヒロイン像が大きく違っていて、時代を感じさせられる。ディズニーアニメの「ベル」は現代的な女性なのだけど、原作のビューティは賢くて美しい昔ながらのお姫様だ。
どちらが良いとか悪いとかって話ではないけれど、ロマンティックを求めるならば、原作、またはジャン・コクトー版の映画軍配が上がる。
ドラマティックを求めるならば圧倒的にディズニーの勝ち。
エマ・ワトソン主演の映画は映画館で観られそうにもないのだけれど、レンタルかテレビ放送で観たいと思う。