エリザベス・テイラーや牧野富太郎等、実在した人物をモチーフにして書かれた短編集。
伝記ではなく、あくまで「実在した人物にヒントを得た」と言うだけで「大人のための童話集」と言う感じ。
小川洋子が自分の好きな物を集めて「自分の為の好きなものファンブック」を作りました…と言うイメージ。実に小川洋子らしい作品だと思う。
不時着する流星たち
盲目の祖父は、家中を歩いて考えつく限りの点と点を結び、その間の距離を測っては僕に記録させた。足音と歩数のつぶやきが一つに溶け合い、音楽のようになって耳に届いてくる。それはどこか果てしもない遠くから響いてくるかのようなひたむきな響きがあった――
グレン・グールドにインスパイアされた短篇をはじめ、パトリシア・ハイスミス、エリザベス・テイラー、ローベルト・ヴァルザー等、かつて確かにこの世にあった人や事に端を発し、その記憶、手触り、痕跡を珠玉の物語に結晶化させた全十篇。
アマゾンより引用
感想
恐らく、ずっと小川洋子を追いかけている人なら間違いなく楽しめると思う。ある意味鉄板。
しかし「で。面白かったの?」と問われると「面白い…と言えば面白いけれど正直微妙」としか答えられない。
雰囲気小説なので雰囲気を楽しむ…と言う意味では満点だけど、残念ながら手垢付いちゃってる感は否定出来ない。
こんな事を書くと「そうか…面白くないんだな」と思われてしまいそうだけど、面白くないって訳じゃないのだ。
「小川洋子にしちゃあイマイチよね」と言う程度。一定レベルは充分クリアしていると思う。
だけど、どの作品にも意外性がないのだ。小川洋子らしい解釈でいつもの通りに終わっていくのでファンなら結末は想像出来るし「ですよね~」としか言えないお話ばかり。
子どものいない夫婦が文鳥を飼う『さあ、いい子だ、おいで』だけは、かつての残酷な小川洋子が顔を見せていて「おっ! これは!」と思ったけれど、それ以外のお話は「まあ、こんなもんか」くらいだと思う。
しかし「読む前の期待値が高いから、どうしても点数が厳しくなってしまう」と言うところもあるかと思う。
あと「マンネリ化」とか「飽き」もある。
どんなに好きな作家さんでも、こうなってしまうのは仕方がないところはあると思う。
作品数が多い作家さんは特に。文豪と呼ばれる人でさえ「これ、面白くなよね?」と言う作品は意外と沢山書いているものだし。
今回の作品、私はイマイチだった。次回に期待したい。