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何者 朝井リョウ 新潮社

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『何者』は大学生の就職活動を描いた小説で直木賞受賞作。

以前読んだ『何様』はこの作品のスピンオフとのことだったので「やっぱり元の作品は読んでおくべきだな」って事で手に取った。

正直言って直木賞に値する作品かと言われると微妙な気持ちになるけれど、現代を描いた作品だと思うし、これを読んでガツンと来た若者は多いと思う。

好き嫌いはともかく、時代に求められて世に出てきた作品だと思う。

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何者 朝井リョウ

ザックリとこんな内容
  • テーマは就職活動。
  • 就活対策のため、拓人は同居人の光太郎や留学帰りの瑞月、理香らと集まるようになる。
  • SNSや面接等、イマドキの就職活動を赤裸々に描写。

感想

個人的にはなんだか読んでいてしんどかった。

と言うのも。私は今の時代の就職活動は知らないけれど、バブルがはじけて「就職氷河期」と呼ばれる時代の最初の世代。就職活動には大苦戦したので登場人物達の悩みがリアルに感じられて辛かったのだ。

圧迫面接とか当たり前にあったし、あの頃のストレスは思い出したたけでも吐きそうになる。

当時は今より頭でっかちで要領が悪い人間だったので就職活動が上手くいくはずもなく、とりあえず仕事に就いたものの完全に負け犬だった。

負け犬から脱出したのは働きながら勉強をして、それを武器に転職してからだ。以降、何度か転職したけれど当時は結構売り手市場の業界で働いていたので「学生時代の辛さは何だったのか?」と思うほど、転職活動は楽ちんだった。

新卒の就職活動なんて二度としたくない。

そう思っていたのに20年後に今度は夫の転職活動の援護をする事に。当時夫は43歳。いくら技術職と言っても転職するには年を取りすぎていて、これもまた苦戦した。

夫はどうにか転職する事が出来たけれど、憔悴する夫を傍で見ているのは辛かったし、言葉通り胃の痛い日々だった。あれは新卒の時の就職活動に匹敵する大変さだった。

作品に登場する若者達は大学生で世間を知らない。

ホント馬鹿だし生意気だけど大学生なんてそんなものだと思う。当時の自分も馬鹿だった。この作品を読んで彼らを笑える人はよほど人間が出来ているのだと思う。

ツイッターやフェイスブックと言う現代的なアイテムが登場するところは今風ではあるけれど「就職活動」の根本なんて、昔から変わっちゃいないのだなぁ…と懐かしく思った。

そして自分も苦戦した経験があるだけに、なんかこう…リアルに感じられて、読んでいて非常にストレスを感じた。

ちょっと残念に思ったのは登場人物達が結局「いい子」の域を出ていないってこと。

言いたくは無いけれど「なんだかんだ言ってリア充なんじゃないの?」ってあたりがリアルじゃないと言うか。

それとも良い大学の学生って、みんなあんな感じなのだろうか?

真面目だとは思うけれど、小物感は半端なく小説としては物足りない。実際にいたら好感が持てたりするのだろうけれど、小説に求める人物としては弱いかな…と言う印象。

それなりに楽しめたけど、それなりの域を出ない作品だった。

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