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清十郎の目 吉村龍一 中央公論新社

今年読んだ本の中で1番重たい作品だった。

昭和初期の山形県を舞台にした作品。貧困、差別、暴力。そしてささやかな幸せを描いた力作だった。

プロレタリア文学ちっくなノリなので、そう言うノリが苦手な方は読まない方が良いと思う。

グロい描写もあったりするし、かなりの鬱作品。しかし、最近その類のテーマをぶつけてくる作家さん自体が珍しいので、ある意味新鮮な作品だとも言える。

今回は存分にネタバレありの感想なので、ネタバレが苦手な方はご注意ください。

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清十郎の目

山形のとある地方都市で、一介の労働者として生きていく上で最低限の生活を営んでいた青年・清十郎。

成長するにつれ、成金や差別など不平等な社会に疑問を抱くようになり、ある日突然、持ち場を脱走してしまう。

逃亡後の生活で、革命思想を持つ仏僧・剛寿や、寒村から身売りされた娼婦・桔梗との出会いに感化された清十郎は、日々困窮していく民を救うため、世直しを唱える剛寿のもと、町の支配勢力に立ち向かうことを決意するが――。

アマゾンより引用

感想

東北地方の貧困話は映画、ドラマ、小説などでも知るところだけど、改めて読むと「そんなに貧しかったの!」と驚いてしまう。

「お腹空いて死ぬ」とか「食べられないから身体が弱って死ぬ」とか、あまりにも悲し過ぎる。

ヒロイン、桔梗の弟が死ぬ時のエピソードで、飼い猫を殺して食べる場面はたまらぬものがあった。「飼い猫食べるなんて考えられない」なんて言ってる場合ではないのだ。

人間、誰だって死にたくない。私も同じ立場だったら猫を殺して食べたと思う。

しかも猫を食べてもなお弟は死んでしまうのだ。不憫としか言いようがない。テンプレではあるけれど、ヒロインは家族を助ける為に身売りする。

一方、主人公である清十郎も酷い生活をしている。

貧民窟のようなところで川魚を獲って暮らしているのだけど、労働者と言うよりもむしろ浮浪者と言った感じ。彼らは人間扱いされていない。

清十郎は懸命に働きながら、世の中の矛盾について考える。あれこれあって、清十郎は元・活動家の住職のいる寺で寺男として働くことになり、そこでヒロイン桔梗と出会う。

プロレタリア文学と言うと共産党的な活動家の話…と言うイメージを持ってしまう人が多いかと思うのだけど、この作品の主人公達もそう言う流れに巻き込まれていく。

ただ、今まであったその類の作品と違って主人公の清十郎は「そういう意見は分かるけれど、自分が求めているのはそんなんじゃない」と思っているところが共感出来た。

清十郎が望んでいたのは暴力的な改革や、犠牲の上に成り立っていく活動でなくて、もっとありきたりな幸せと穏やかな生活だった。

これって、現代にも通じる感覚ではないと思う。

原発問題にしても、保育園問題にしても「ちょ…言いたい事は分かるけど、それはどうなの?」とドン引きしてしまうプロ市民や活動家が多過ぎる気がする。

そう言うノリって今も昔も変わらないのかも知れない。

久しぶりに骨のある作品を読む事が出来て満足しているけれどあえて文句を付けるなら、登場人物が多くて、1人1人の描写が薄くなってしまった事だろうか。

苦海で生きる桔梗の悲惨さはアッサリ流されているし、清十郎を拾ってくれた寺の住職のエピソードも壮絶ではあるけれど、その行動は説得力に欠けるところがある。

ちなみに。この作品の結末はどうしようもなくやるせない。

読後感は最悪だし、あまりにも不幸過ぎるし、行き場のない気持ちだけが取り残されてしまった。

しかし力作である事は間違いないし読んで良かったと思う。はじめて手に取った作家さんだけど次回作を期待している。

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白い木蓮の花の下で
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