昼メロ的と言うのだろうか。大正浪漫の世界で、2人の女が1人の男を挟んで張り合う……という筋書きだった。昼メロとして読めばそれなりに楽しめるとは思うのだが、期待外れという感じ。
たしか発売した時の帯に「欲しいのは友達の夫」とか、なんとか、そういうキャッチコピーがついていたと思う。それだけに「やっぱ友達の夫を寝取るってことは葛藤があったり、ドロドロしていたりするのだろうなぁ」などと思って、ドキドキしていたのだけれど、2人のヒロイン達は「クラスメイト」とか「旧友」であっても、最初から「友達」ではなかったんじゃないかと思ってしまった。もっとも、そういう大雑把な関係の人でも、とりあえず「友達」として認識してしまうあたりは、極めて女性的だといえなくもないが。私の感覚からすると「よく、まぁ。そういうどうでもいいことを、しつこく覚えてるよね。貴女達は」としか言いようがない。2人とも到底、私と友達にはなり得ないタイプの女性だ。
女の意地の張り合いはよく書けていると思った。以前、母から「夫に女ができると、夫への愛情という以前に、相手の女に負けたくないと思ってしまう」というような話を聞いたことがある。私は妻という立場になったことがないので、その辺のことを語る資格はないのだが、それでもなんとなく分かる気がした。女のプライドとか、意地とか、そういう問題なんだろう……と。
読みやすい文章で、会話が多めだったせいか、通勤電車の往復だけで読み上げてしまった。読み捨てにするには良い本かも知れないが自腹で購入していたら「ちぇっ。なんだぃ」と思っていただろう。作者の作品は、好きなものが多いのだが、この作品はイマイチだった。どうも薄っぺらい感じがして。次に期待したいと思う。
自由戀愛 岩井志麻子 中央公論新社