久しぶりに面白い大河浪漫小説を読ませてもらった。
ドラマティック・ロマンティックが止まらない。往年の名作昼ドラマ『華の嵐』が好きな方なら夢中で読めると思う。
実のところ私自身は『華の嵐』を観たことが無い。
『華の嵐』と、その脚本を書いた君塚良一の大ファンの友人から『華の嵐』については散々レクチャーされていて、イメージだけで語ってるに過ぎない。
なので「こんなの『華の嵐』じゃない」と言われるかも知れないけれど「要するに明治時代のお貴族様が出てくる恋愛がらみの物語である」と言う事をお伝えしておきたい。
早春賦
- 主人公の菊乃は裕福な士族出身。
- 貧乏華族が援助欲しさに菊乃を求め、菊乃の家は華族との繋がりが欲しくて菊乃を結婚させる。
- 菊乃は結婚相手に一目惚れ。しかし夫となった人は光源氏…と言うよりも節操のない下半身人間で現代の感覚からすると最悪の男。
- 夫から裏切り続けられる菊乃だが「負けっぱなしではいられない」とばかりに、傾いた婚家を牛耳っていく。
感想
美人で頭が良い出来過ぎヒロイン素敵過ぎる。それなのに夫から愛されない展開とか!
男性が読んだら「そんな出来た女いる訳ない」と言うような女性かも知れないけれど、女性視点で読むと最高に気持ち良い。
大河浪漫が好きな女性の皆様に全力でおすすめしたい。そして是非とも映像化して戴きたい。
大絶賛出来るレベルで面白いのだけど「あ~。面白かった」以上の物を感じられなかったのは残念。
軽くネタバレ恐縮だけど、菊乃が最後に純朴な侍女に負けちゃう流れとか、子世代の話についてはテンプレ通りと言うか無難に収まっちゃった感が否めないところ。
里中満智子の『あすなろ坂』がまさにこの展開だった。
実在の人物ではないのなら、そこはもっとドラマティックに突っ走って欲しかった。
……とは言うものの、ドラマティック・ロマンティック路線の小説って、なかなかありそうでないので貴重だと思う。ハーレクイン・ロマンス張りの豪華な設定の物語が嫌いな女がいるだろうか?
この作品を書いた作者の作品を読むのは初めてなのだけど、実はNHKの『サラメシ』と言う番組で観ていたので「ああ…あの人か…」と以前から知っていた。
丸の内新聞事業協同組合の「食堂のおばちゃん」をしながら小説を書いておられるとのこと。
『サラメシ』を観た時は「松本清張賞か…ミステリ苦手だし関係ないかな」と思っていたのだけど、この路線の作品を書いてくれるのなら是非とも読ませて戴きたい。今後はチェックしていこうと思う。