絵描きである作者、伊勢英子と、夫と、子供2人と、グレイという名のハスキー犬の生活を描いたイラスト付きのエッセイ集である。
動物エッセイ(ペットエッセイ)を読むと「ペット自慢ほど馬鹿なネタはない」と思う。
がしかし動物好きにとって、これまた「ペット自慢ほど面白いネタはない」のも事実である。この作品も、私を夢中にさせるに充分な1冊だった。
グレイがまってるから
犬が笑う。泣く。そして歌う。家族はもっと笑いもっと泣く。
絵描きと建築家と子供二人の一家に、ハスキー犬がやってきた。
グレイと名づけられた子犬は家をかじり、庭を掘り返し、絵描きをたたき起こす。犬とともに風をおいかけ、時を忘れた絵描きは即興詩人になった。産経児童出版賞受賞作。
アマゾンより引用
感想
世の中には、相当な数の「犬エッセイ」や「犬の飼い方本」が出版されていて、それなりに面白かったりするのだが、この作品は特に良かった。
……というのは犬好き人間が通ってしまいがちな「人間と犬との暮らし」が描かれていたことである。
犬は好きだが、他人に自慢できるようなシツケをしている訳でもなく芸の1つのできる犬に育てられなかったが、それでも「自分の犬が1番可愛い」といった犬馬鹿なら、誰もがうなずいてしまうようなエピソードが多く語られている。
多数、挿入されている漫画ちっくなイラストが素晴らしく素敵だった。
動物好きだからこそ描ける動物の表情が抱きしめたくなるほど愛らしかった。首の傾げかたや、お尻のラインや、口の開き具合などなど……言葉はなくとも喜怒哀楽が伝わってくるような犬のイラスト……といった感じなのだ。
犬好きの人間なら「そうそう。犬って、あんな表情するよね」と肯くこと受け合いだ。
余談だが私は世界中の動物の中で犬が、いっとう好きである。
よく「犬派」だの「猫派」だのといったことを耳にするが猫と較べて犬が好き……というのではなくて単純に、生まれてからこのかた、ずっと犬と暮らしてきたからそう思うに過ぎない。
もしも私が猫と暮らしていたならば、猫好きになっていたと思う。共に暮らしているくらこそ、感じられる愛しさというものがある。この作品は、そんな「愛しさ」で埋め尽くされているようだった。
犬好きには、こたえられない作品だと思う。
のんびりと過ごしたい休日や、頭を休めたい時や、くたびれ気味の時などにニマニマとしながら読むのがいいかも……と思う1冊だった。