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院内カフェ 中島たい子 朝日新聞出版

自慢出来るような話ではないけれど、私は生まれてこの方病院と縁が切れた事がない。

子どもの頃は自分自身が。私が元気になってからは家族が次々と病院だの、怪我などをしたので入院付き添いに関しては「セミプロ」であると自覚している。

なので題名を見た瞬間「これは読まねば!」と思って手に取った。

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院内カフェ

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受診するほど病気じゃない。入院するほど病んでない。けれど、どこか不安な私たちは、あのカフェで、病院の傍らにいることで、癒されている。

過去にあそこで「何かが良くなった」経験があるからだ。

『漢方小説』から10年。新たな舞台は総合病院のカフェ。ふた組の中年夫婦のこころと身体と病をえがく、カフェの醸し出す温かさが流れる長編小説。

アマゾンより引用

感想

最近の総合病院は昔に較べると設備が断然良くなったと思う。

私が子どもの頃の病院は美味しくない食堂兼喫茶店があって、陰気な売店があれば御の字……って感じだったけれど、イマドキの病院はコンビニやATMがあり、セルフサービスのチェーン店カフェがあったりする。

この作品も病院に併設されチェーンのカフェが舞台。主人公は売れない小説家で人間観察が目的でカフェでアルバイトをしている作家主婦……と言う設定。

「介護人の苦悩」を描いた作品として読むなら、なかなかのものだと思う。

登場人物の苦悩は私自身、うんざりするほど味わってきた事ばかりなので「そうそう」「分かるわぁ」と共感する事が出来た。

病気って本人が1番辛いのだけど周囲にいる人間だって辛いのだ。

……とは言うものの大切にされるべきは病人であって、家族は病人を支えるしかない。これって息苦しい事なのだけど、なかなかそれを声に出しては言い難い。その辺の心の機微は上手く表現されているなぁ……と感心させられた。

しかし、この作品を好きか嫌いかで分けると、完全に「嫌い」としか言えないのが残念だ。

この作品には「優しさ」とか「愛情」が感じられないのだ。たぶん作者の視線が冷たいからだと思う。1つ1つのエピソードは一応、ハートフルな感じに仕上がってるのだけど「精神科に通っているのかな?」と思われる男性の描写や、それを見ている主人公(たぶん作者自身を投影しているのだと思う)の視線が冷ややかでいたたまれない。

「世の中ってこんなもんじゃないの?」と言われてしまうと、それまでなのだけど「病院」と言う場所をテーマに持ってきているのであれば、病気や病人、社会的弱者に対する理解が必要だと思うのだ。

いっそ桐野夏生レベルまで冷徹に突っ切ってくれたら、それはそれでアリだと思えるのだけど「小馬鹿にしている」ような印象しか持てず読んでいてとても不愉快だった。

「作家だから好奇心旺盛なのは当たり前」「作家だから視点が面白い」と自惚れておられるのか、主人公の「売れない小説家」の人となりが、これっぽっちも好きになれなかった。

こう言う作風が駄目だとは言わないけれど病院をテーマにしたのはマズかったと思う。なにげに不愉快な作品だった。

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