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55歳からのハローライフ 村上龍 幻冬舎文庫

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村上龍と言えば『限りなく透明に近いブルー』で芥川賞を受賞した作家だけど、近年は小説家としてより「なんかテレビで立派そうなコメントをする人」みたいなイメージが強い。

私が最後に読んだ村上龍の作品は『 新13歳のハローワーク』だった。そもそも『新 13歳のハローワーク』も一時期流行った『13歳のハローワーク』の改訂版だった。なので「村上龍が小説を出すなんて久しぶりじゃないの?」と思って手に取った。

実際、村上龍の小説って最近、話題になっていない。調べたところ2023年に『ユーチューバー』って作品が出ているようだけど、話題になった記憶がない。かつてイキり散らかしていた小説家が以前のように小説を書かなくなるという状況は物哀しいものがある。

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55歳からのハローライフ

ザックリとこんな内容
  • 55歳の男女が主人公の短編集。「キャンピングカー」「ペットロス」「結婚相談所」「トラベルヘルパー」「空を飛ぶ夢をもう一度」の5編収録。
  • 定年退職後、キャンピングカーを購入して妻と旅行に行こうと考える男性、結婚相談所で再婚相手を探す女性、自分とは違う世界に生きる女性と束の間の恋に落ちた元トラック運転手の男性。
  • 物語の主人公達は55歳という共通点以外はそれぞれ違う人生の中で自分の老いと老後、そして生き方を考えていく。

感想

本当に申し訳ないのだけど……ちっとも面白くなかった。この本を読んだ時点の私の年齢は53歳。主人公達と同年代ってことで、どこかしら共感を覚えるだろうと期待して手に取ったのだけど、期待外れどころの話ではなかった。

村上龍……どうしちゃったのよ?

漫画ではあるけれど弘兼憲史が中高年の恋愛をテーマにした『黄昏流星群』って作品があるのだけど、そちらの方が断然面白い。視点も物語構成もドラマティックさも『黄昏流星群』の方が圧倒的に上だと感じた。

結婚相談所で再婚相手を探す女性とか、ずっと独身で生きてきたトラック運転手が恋に落ちるとか、定年退職後の浪漫としてキャンピングカーを買おうとする男性とか、設定自体は悪くないのだけど、どれもこれも物語が安っぽい。

短編集なので仕方がない…と言ってしまえばそうなのだろうけれど、どれもこれも大した紆余曲折もなく読者を驚かせるような仕掛けもなく「まぁ、そのあたりで落ち着きますよね」程度のオチにおさまっている。読後感が悪くないのが救いと言えば救いで、読み終えた後で本を壁に投げつけたくなるような壁本ではなかったものの、良かった探しが難し過ぎる。

村上龍のような立場の人に庶民の老後を描くのは難しいのかも知れないな…と思った。

小説家は自分が経験していないことも文章にできるとは言うものの「経験していないことを見てきたように書ける作家」と「ある程度経験したことを書く作家」がいて、村上龍は後者なのかも知れない。せめて男性だけにしておけば良かったのかも知れない。

女性の描写があまりにも下手くそ過ぎた。例えばトラック運転手が恋する相手は「元小学校教師」って設定なのだけど、自分のことを「わたくし」と言うような女性で立ち居振る舞いもいかにも上品で上流階級っぽい雰囲気なのだけど、そういう設定にしたいなら「かつて高校で音楽を教えていて今はピアノ教師をしている」とか「書道家・茶華道家」にすれば良いのではないかと思ってしまった。もう、一事が万事コレジャナイ。

村上龍の作家としての老いを感じてしまって哀しくなった。

今までありがとう、村上龍。私もあなたの作品を面白く読んだ時期があったけれど、あなたの残した名作だけを心に刻んでこれ以上は突っ込んでいかないようにしたいと決意した。

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