『イン・ザ・メガチャーチ』は第23回本屋大賞受賞作。個人的には「朝井リョウに本屋大賞あげなくても良いのでは?朝井リョウの作品は書店員が推さなくても勝手に売れるでしょ?」と言う気持ちになってしまったものの、私は本屋大賞の選者ではない。
流石は朝井リョウだなぁ~と言う大作。朝井リョウ……世の中の空気を読み取って言語化するのに長けていらっしゃる。
イン・ザ・メガチャーチ
ザックリとこんな感じの作品
- 離婚して家族との距離を図り切れずにいる久保田慶彦は勤務するレコード会社で過去の実績を買われて新たなアイドルグループの運営に加わり、熱狂的なファンダム形成に関わり始める。
- 一方、久保田慶彦の娘である武藤澄香は大学で孤立感を抱えていた。そんな中で新人アイドルに強く惹かれ、SNSや推し活界隈で自分の居場所と承認を求めて推し活にのめり込んでいく。
- 契約社員の隅川絢子は、仲間と舞台俳優を応援する日々を送っていたが推していた俳優に関する報道をきっかけに状況が一変。ファンダム内の空気や人間関係が崩れ始める。
- 久保田慶彦・武藤澄香・隅川絢子の視点は次第に交差し、運営側とファン側双方の思惑が絡み合い……
感想
あらすじでも紹介しているけれど『イン・ザ・メガチャーチ』は推し活界隈の物語。推し活にハマる人間、仕掛ける人間。そして「推し」となるアイドルの存在。それらが絡み合って物語が形成されていた。
ノンストップで読み進めることができる朝井リョウらしい物語展開が素晴らしいこの作品。題名にも少し絡めているけれど「チャーチマーケティング」と言う言葉が印象的だった。
「チャーチマーケティング」とは、キリスト教の教会がその活動やメッセージをより多くの人に届け、新しい信者を迎え入れたり、既存の信者とのつながりを深めたりするために用いる戦略的なコミュニケーション手法。
チャーチマーケティングはアメリカの教会……特に「メガチャーチ」と呼ばれる大規模な教会が信者獲得のために行っているそうなのだけど、なるほど「推し活」って宗教味がある。「推し=信仰対象」って感じなのだろう。
そもそも、人との繋がり(人間関係)の希薄さと宗教は相性が良い。そしてそれは推し活にも丸っと当てはまっていく。そのあたりの流れをガッツリ書いてしまうとネタバレになってしまうので控えるけれど、一気に読める面白さだった。
取り上げたテーマは良かったし、朝井リョウの言いたいことは理解できるものの「小説」としての完成度が低いってところが残念だった。特にラストが綺麗じゃない。ここまで書いたなら最後まで踏み込んで欲しいところなのに投げっぱなしになっている。
なんだろう……この靴の上から足を掻くようなもどかしさ。もう少し……もう少し踏み込んでくれたら文学として成立するのに!
『イン・ザ・メガチャーチ』は話題作としては充分だし、現代社会をよく表しているとは思うけれど「小説」としての完成度はイマイチだと思った。朝井リョウの次の作品に期待したい。


