私の中の下衆い好奇心を満たすべく手に取った1冊。題名からして下衆くて素晴らしい。
ちなみに私はホストクラブには行ったことがない。独身時代は客引きしているホストの横を通り過ぎることはあったものの行きたいと思ったこともない。私は腹の底からヤンキーを憎んでいるのでヤンキーテイストな風体のホストは好きじゃないのだ。ロマンティック執事の館だったら行ってみたいけど。
だけど好奇心…と言うか、怖いもの見たさ的なところはあるので手っ取り早く読書と言う形で摂取してみた。
歌舞伎町に沼る若者たち 搾取と依存の構造
- Z世代ライター佐々木チワワが歌舞伎町のホスト文化を社会学的に分析する。自身の体験も交え、搾取と依存の構造に迫る。
- 売上至上主義や承認欲求など「歌舞伎町の病」を5つ提示。一般社会との共通点を示しつつ若者の価値観を考察。
- 作者自身によるホストクラブま売掛問題の解決策など。
感想
ホストクラブって私の認識ではキャバクラの男性版…って感じだったけど、なんかちょっと思ってたのと違ってた。だけど男女の性差を考えたら「そりゃそうか」って感じではある。
お金を払ってお酒を飲みつつ異性にチヤホヤしてもらう…ってコンセプトはキャバクラもホストクラブも同じだけど、ホストクラブの場合は「自分の推しを育てる」って要素があそうで、たくさんお金を使ってお気に入りのホストを1番にするのが尊い行為とのこと。なんだか課金ありきの育成ゲームみたい。
ホストクラブを知らない人間からすると「なるほど。ホストクラブってこういう場所なんですね」と面白く読めたし、ハマる人がいるのも理解できた。
さらに面白かったのは新宿歌舞伎町って街はホストクラブだけでなくキャバクラや性風俗のお店もあって、ホストクラブにハマった女性の中にはホストクラブで遊ぶためのお金を稼ぐために女性がキャバクラや性風俗働いているとのこと。
キャバクラや性風俗で働いて、そのストレスをホストクラブで発散する……だなんて新宿歌舞伎街って場所の中でお金がグルグル循環している仕組みは面白いと思った。ある意味持続可能なSDGsとも言える。
ホストクラブについては売掛払い(ツケ払い)が禁止されたと言うニュースを聞いていたけれど、現在はそのかわりに「立替」って形がスタンダードになっているとのこと。言葉通り、支払いを立替ることでホスト自身が客の支払いを持つ…ってことらしい。郵便局員が年賀はがきを買ったり、生命保険会社の営業が自社の生命保険に加入したりする自爆営業みたいな感じ。ホストって仕事も大変なんだなぁ~と他人事として思った。世の中に楽な仕事なんて無いのだ。
『歌舞伎町に沼る若者たち 搾取と依存の構造』は作者自身がホストクラブにハマって愛している分だけリアルさを感じたし面白くもあったけれど、体験談以上学術研究未満…って感じに仕上がっている。第5章の「売掛問題解決のための緊急提言」に至っては「この人、何言ってるんだろ?」みたいな気持ちになってしまった。
歌舞伎町のことを「持続可能なSDGs」なんて感想を持ってしまった私が言うのもなんだけど、そうやってグルグル回っていくお金以上に儲かっている上澄みは部分はヤクザが持っていくのだから「歌舞伎町界隈自体、無くなっても問題ないよね?」と思わなくもないけれけど、必要としている人だっているのだろうから部外者がどうのこうの言う筋合いはないのかも知れない。
下衆い好奇心を満たしてくれる良い読書体験ができて満足している。

