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花まんま 朱川湊人 文春文庫

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『花まんま』は第133回直木賞受賞作。

私は一時期、朱川湊人にハマっていて、中でも『わくらば日記』『わくらば追慕抄』は今でも大好きで続編を待ち望んでいるほど。『花まんま』が直木賞受賞作なのは知っていたけど「たぶん、絶対に好きなヤツだから、すぐに読んだらモッタイナイ」みたいな気持ちでずっと大事に取っておいた。

ところが…朱川湊人は生憎と『わくらば日記』『わくらば追慕抄』の続きは書く気が無いみたいだし、そうこうしているうちに『花まんま』が映画化されたと聞いたので「じゃあ、うっかりネタバレを踏む前に読んでおくか…」ってことで今更ながら読んでみた。

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花まんま

ザックリとこんな内容
  • 第133回直木賞受賞
  • 昭和の大阪下町を舞台にした短編小説集。表題作を含む6作品(『花まんま』『摩訶不思議』『トカビの夜』『妖精生物』『送りん婆』『凍蝶』)を収録。
  • 収録作はホラーとまではいかない「ちょっと不思議な話」「ちょっと切なく温かい話」が多い。

感想

予想通り面白かったし私の好みのど真ん中過ぎた。ただただ良かった…(語彙力)

私が特に気に入ったのは表題作…ではなくて朝鮮人の男の子(現代的に言うなら在日韓国人と書くべきだろうけど原作準拠で)との交流を描いた『トケビ』だった。

『花まんま』は「古き良き昭和」が舞台になっているのだけど『トケビ』も大阪の下町が舞台。具体的な地名は書かれていないものの大阪の人なら「あそこだな」と分かるかと思う。

私は作者と同世代なので『花まんま』に収録されている作品の世界を懐かしく思い出しながら物語を辿っていた。当時はまだ在日韓国人への差別意識が強くて『トケビ』に登場した子ども達がどんな状況に置かれていたのかは察しがつく。

「あの家の子とは遊んじゃいけません」と言う大人。そして怪獣やウルトラマンを通じて容易に仲良くなってしまう子ども達…あるあ過ぎる光景だった。

『花まんま』はどの作品も幽霊譚めいた要素が組み込まれているのだけど、その中でも『トケビ』の切なさはたまらぬものがあった。私自身が子どもと関わる仕事をしているからグッときた…ってところもある。

どの話も良かったのだけど『トケビ』とは違った方向性で考えさせられたのは『妖精生物』。こちらは「イイハナシダナー」ではなくて「当時の社会ってそんな感じでしたよねー」って話だった。『妖精生物』に出てくる母親は絵に描いたような昭和の女だった。姑に仕えて、夫を支え、子どもを育てつつ文句の一つも言わない耐える女。私が子どもの頃はそここに、あんな女がいたように思う。

昭和のノスタルジーを感じる部分もあったけど、昭和の駄目な部分も存分に描かれていて「昔は良かった」なんて気軽には言えないぁ~と思ったりした。

表題作の『花まんま』は映画化されたとのことだけど、映画の公式サイトをチェックしてみたけれど、映画は原作とは少し設定が違うみたい。気が向いたら映画も観てみたい。

何にせよ久しぶりに読んだ朱川湊人作品は私には満足のいくものだった。やっぱり好きだわ…朱川湊人。また『わくらば日記』を再読したいと思った。

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