『江戸の少食思想に学ぶ 水野南北『修身録』解題』は水野南北の『修身録』をもとに書かれた解説本的作品でAudibleで耳から聞いた。
江戸時代と言うと元禄文化の華やかなイメージが強くて、食文化が急速に成熟していったように思っていたので、そんな時代に少食思想があった…ってことに興味を持った。
現代もベジタリアンがいたり断食する人がいたり食に対してコダワリの思想を持った人が一定数いるけれど、江戸時代もそんな人がいたのだろうか?
……などと興味本位で読んで(聞いて)みた。
江戸の少食思想に学ぶ 水野南北『修身録』解題
ザックリとこんな内容
- 「開運のための少食論」の解説書き下ろし
- 江戸時代に少食・粗食のすすめを説いた人物がいる水野南北を紐解く
- 水野南北の『修身録』は、貝原益軒の『養生訓』と並ぶ食と命の指南書とされている
- 「食の慎み」と「立身出世」ための少食思想は、過食・飽食の現代通じるものがある
感想
結論から先に書くと水野南北は占い師的な人だったらしく、少食論とともに開運論も説いていて「少食で生きることが開運に繋がる」みたいな考えの人だったみたい。
……なんだか現代のヘンテコ新興宗教みたいな話だ。以下は水野南北の説いた言葉の一部抜粋。
- 人は天から一生の食を与えられている。これを余計に食べるということは、天に借りを生ずるということだ
- 本来の天運が良くとも、食を過ごす者であらば、物事に際して障りが出るものだ
- 食あれば命あり。ゆえに少食の者は長寿なのである
- 立身出世があるかどうか見定めるにはもっとよい方法がある。まず食を減らせ。そしてそれを厳重に定めよ。これを守る者には立身出世があろう
水野南北の『修身録』は貝原益軒の『養生訓』と並べられることがあるようだけど、方向性は随分違う気がする。食べ過ぎが病気を生むのは本当だけど、粗食に徹したら運が良くなって出世する…ってのはいくらなんでもトンデモ科学が過ぎる。
美食が極まってくる時代だからこそ「粗食を心掛けましょう」って考えは理にかなっているし、豊かだからこそ登場した考え方だと思う。
江戸時代にも現代に通じるところがあるのだなぁ~と感心した。
自分自身の生活に役立つタイプの本でなかったけれど、歴史風俗を知るための本としては面白い1冊だった。
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