『感覚過敏の僕が感じる世界』は子どもの起業支援事業を経て13歳で「感覚過敏研究所」を設立した作者が書いたノンフィクション本。
作者は感覚過敏の啓発、対策商品の企画・生産・販売、感覚過敏の研究に力を注いでいて『感覚過敏の僕が感じる世界』もその流れから生まれ本なのだと思う。
私は仕事で感覚過敏のお子さんと接しているので勉強がてら読んでみたのだけれど「感覚過敏について知りたい」と思っている人が読むにはうってつけのの1冊だと思う。
感覚過敏の僕が感じる世界
- 感覚過敏を持つ作者自身が感覚過敏の症状について当事者目線で伝える。
- 作者の母や専門家(小川修史先生/兵庫教育大学准教授)の話も掲載。
- 「感覚過敏とはどんな物なのか?」「何に困っていたか?」「どうしたらストレスが軽減されるのか?」など感覚過敏に関する様々なことを綴る。
感想
世の中には障害者に関する書籍はたくさんあるけれど、障害を抱えて生きる当事者が書いたもの…となると数がグッと少なくなる。『感覚過敏の僕が感じる世界』は当事者が自分の経験を元にして書いているのが貴重だと思う。
私は「自分の仕事の役に立つ情報があればいいな」との気持ちから手に取ったのだけど、そういう意味では特に新しい知識を得ることはできなかった。だけど「感覚過敏について知りたい」と考えている人にとっては最適な1冊だと思う。
感覚過敏…とひと言で言っても視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚…と、人には様々な感覚があるので対処法は変わってくる。感覚過敏について理解のない人の中には「そんなのワガママなのでは?」みたいな事を言う人もいるれけ、とんでもない話だ。
作者の歩んできた人生はなかなか壮絶なものだけど、感覚過敏の度合いも様々で作者よりも緩やかな感覚過敏の人もいれば、作者よりも重い感覚過敏の人もいる。例えば…だけど、味覚過敏が重い場合、本当に食事が取れなくて経口以外の栄養摂取で生きているケースも少なくないのだ。
私が仕事で関わっているお子さんの中にも胃ろうや鼻注などで栄養を入れてたり、ラコールやエンシュアを哺乳類で飲んでいる方がいる。感覚過敏と言ってもワガママ云々なんてレベルではなく、命に関わるくらいの話。
ゲームで言うなら感覚過敏の人達は人生ってゲームをハードモードでプレイしているようなものだ。ノーマルモードやイージーモードのプレイヤーとは違う世界で生きている。
感覚過敏だからと言って周囲の人や社会に対して「特別扱いしてくれ」とか「優しくしてやってくれ」とは言わないまでも、理解して欲しいな…と思う。
保育園や幼稚園で働く人や学校の先生…要するに子どもにと関わる仕事をする全ての人に読んで戴きたいと思える1冊だった。