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刺青・秘密 谷崎潤一郎 新潮文庫

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最近、ふとしたキッカケからツイッターで谷崎潤一郎が好きな人をフォローしてみた。

その人は猛烈に谷崎潤一郎が好きらしくて、その人のツイートを見ていたら私も熱に浮かされるように谷崎潤一郎が読みたくなって久しぶりに手にとってみた。

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刺青・秘密

肌をさされてもだえる人の姿にいいしれぬ愉悦を感じる刺青師清吉が年来の宿願であった光輝ある美女の背に蜘蛛を彫りおえた時、今度は……。

性的倒錯の世界を描き、美しいものに征服される喜び、美即ち強きものである作者独自の美の世界が顕わされた処女作「刺青」。

作者唯一の告白書にして懺悔録である自伝小説「異端者の悲しみ」ほかに「少年」「秘密」など、初期の短編全七編を収める。

アマゾンより引用

感想

数ある谷崎潤一郎作品の中で私が最も好きなのは『春琴抄』なのだけど、本棚を探していてこの作品が最初に目についたので、これを読むことにした。

新潮文庫の谷崎潤一郎シリーズは表紙が統一されていて素晴らしいと思う。

最近は萌え絵の表紙だの、漫画家のイラストの表紙だのが多いけれど「谷崎潤一郎はこうでなくっちゃ」と読むたびに思う。

頭の堅いババアの戯言だって事は分かっているけれど、なんでもかんでも新しくすれば良いってもんじゃないと思うのだ。

さて。この1冊は数ある谷崎潤一郎短篇集の中でも変態大特集と言っても過言ではない。素晴らしい。実に素晴らし過ぎる。

どの作品も面白くて全て感想を書いていてはキリがないので中でも気に入っている『刺青』と『少年』について。

まずは『刺青』今さらながら美女の描写が素晴らしい。

四の五の言わずに美文を楽しむ作品だと思う。谷崎潤一郎の美文を読む時の感じって美味しいものを食べた時に「ん~」ってなる感じと似ている気がする。

私はどちらかと言うと時代背景が古い作品はちょっと苦手で、イマイチ世界に入っていけない事が多いのだけど、この作品はそれを感じさせない。

設定とか描写ではなく感覚に訴えてくるからかも知れない。そして『刺青』の中で最も素晴らしいのはラストの一文。

女は黙って頷いて肌を脱いだ。折から朝日が刺青の面(おもて)にさして、女の背は燦爛(さんらん)とした。

学生時代に初めて読んだ時の衝撃ったらなかった。

刺青師の清吉は女郎蜘蛛の刺青と同時に、彼にはもう手の届かない女を作り上げてしまうくだりに痺れてしまった。

物語の途中で刺青師の清吉は『清浄な人間の皮膚を自分の恋で彩ろうとするのであった』と書かれているけれど、清吉の恋は決して手の届く事のない天上の恋だと思わずにはいられない。

その届かない感がグッっと来る。

『少年』は物語の滑り出しと終わりとのギャップが凄い。

初めて読んだ時、お金持ちの懐かしい思い出的な話かな……と思って読み進めて度肝を抜かれた。美しいサド女性は谷崎潤一郎の真骨頂。特に足フェチよろしく足の描写が素晴らしい。

綺麗な人は、足の指の爪の格好まで綺麗に出来ている

谷崎潤一郎は女性の足が心底好きなのだなぁ。

自分の「好き」をここまてせ突っ込んだ作品は珍しいのではないかと思う。本当に面白い本は何度読んでも面白い。久しぶりの再読だったけれど良い読書が出来た。

それにしても、そろそろ老眼になりつつある私にとって昔版の新潮文庫の字の大きさはけっこう辛い。

電子書籍化するか、老眼鏡を買うか、天眼鏡を導入するか……早急に対策を考えたいと思う。

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