『六人の嘘つきな大学生』は就活をめぐる物語。2024年に映画化も決定しているとのこと。
私。就職氷河期の第一世代。前年度までは「豪華ランチ付き会社説明会」なんてのがあったりして、先輩方は数社内定をもらえた中からよりどりみどりで入社先を決める…って感じだったのに、唐突に就職できない状況に突入。就職活動に苦戦し、それこそ圧迫面接とか普通にあったし、私は卒業までに就職することができなかった。
なので『六人の嘘つきな大学生』の中で描かれている「就職活動の風景」には見覚えがあるものばかりで、読んでいて胸が詰まった。
『六人の嘘つきな大学生』は就活の物語であると同時に謎解きゲームでもあった。仕掛けがちょっと面白くて、最後まで楽しく読み切った。
六人の嘘つきな大学生
- IT企業「スピラリンクス」が初めて行う新卒採用の最終選考に残った6人の就活にまつわる事件の物語。
- 最終選考に残った6人は1カ月後までにチームを作り上げ、ディスカッションをする…と言う課題を与えられ、全員で内定を得るため学生達は交流を深めていく。
- しかし本番直前に課題の変更が通達される。それは「6人の中から1人の内定者を決める」こと。仲間だった6人は、ひとつの席を奪い合うライバルになった。
- 内定を賭けた議論が進む中、6通の封筒が発見される。個人名が書かれた封筒を空けると「●●は人殺し」だという告発文が入っていた…
感想
先にも書いたけれど『六人の嘘つきな大学生』は就活小説としても面白いし、謎解き小説としても面白かった。
単純に物語を読んでいくと、なんとなくノリとか雰囲気で「あ。犯人この人なんじゃないかな?」と分かる部分もあるけれど「じゃあ、どうしてこの人物はこういう行動を取ったのか?」については最後まで分からないようになっている。
ざっくり言うと「あえて伏せられている情報」が多いのだ。
映画化が決まっているとこのだけど「伏せられている情報」を映画化する時にどうやって処理するのか興味がある。文章化された情報からは分からない部分も視覚化すとる分かっちゃうんじゃないかな…と。
今回の作品は謎解き要素が強いのでネタバレすることが出来ないのが残念だけど「人は色々な顔を持っている」ってことと「ほんの僅かな情報から人を判断することは出来ない」って事を思い知らされた。
読んでいて、途中でムカつく部分もあったけれど決してイヤミス(読後に嫌な気分になるミステリ小説)ではないので安心して手に取って戴きたい。
娯楽作品としても面白かったし読後に考えさせられる部分もある読み応え抜群の1冊だった。浅倉秋成の作品を読むのはこれが初めてなのだけど、別の作品も是非読んでみたい。