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映画『メタモルフォーゼの縁側』感想。

2.5
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映画『メタモルフォーゼの縁側』は鶴谷香央理原作の『メタモルフォーゼの縁側』を実写映画化した作品。

『メタモルフォーゼの縁側』は夫を亡くして1人暮らしをしている75歳の書道教師、雪がふとしたキッカケからBLにハマり、高校生の「うらら」と好きなもの(BL漫画)を通じて交流を深めていく物語で私は連載時から追いかけて読んでいた。

原作漫画が好きだったので実写映画はしばらく手が出なかったのだけど、Amazon primeで公開されていることを知り「せっかくだから観てみるか…」とうっかり視聴してしまった。

……ゴメン。原作ファンの私には受け入れ難い仕上がりだった。ただし原作を知らず真っ白な心で観ることが出来たら、そこそこ楽しめる作品だとは思う。

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メタモルフォーゼの縁側

メタモルフォーゼの縁側
監督狩山俊輔
脚本岡田惠和
原作鶴谷香央理
製作総指揮伊藤響
出演者芦田愛菜 宮本信子 高橋恭平(なにわ男子)
古川琴音 汐谷友希 伊東妙子
菊池和澄 大岡周太朗 生田智子
音楽T字路s
主題歌うららと雪
「これさえあれば」
公開 日本 2022年6月17日
上映時間118分

あらすじ

冴えない高校生活を送る17歳のうららはアルバイト先の本屋でBL漫画を堂々と買っていく老婦人、雪と出会う。

雪は夫に先立たれ、書道教室の先生として孤独な日々を送っていたが、BL(ボーイズラブ)の意味も知らないまま、美しい表紙に惹かれて思わず手に取っただけだった。

BLに魅了さてしまった雪は再び本屋へ向かい、漫画の続きを探しているうちにBLに詳しいうららと意気投合する。そして、2人はいつしか年の差を忘れて友情を育んでいく。

互いのBL愛を語り合う日々の中、雪はうららに質問する。「うららさんは自分で漫画を描きたいと思わないの?」うららは雪の言葉をキッカケに自らもBL漫画を描き創作漫画の即売会「コミティア」への参加を決意する。

2人の年の差は58歳、うららと雪は生まれてはじめて「同人誌」を作ることにななり…

年齢を越えた友情

『メタモルフォーゼの縁側』の良さはなんと言っても「年の差58歳の友情」ってところにあると思う。

「そんなに年の差があった友情が育まれるなんて難しいのでは?」と思う人もいるだろうけど、私は30歳以上年上の友人と長らくお付き合いしている経験上「普通にありえる」と思う。趣味は年齢を越える。好きなことが同じなら会話は永遠に続いていくものだ。

雪とうららも最初は互いに戸惑いを隠しきれない感じだったけれど「BL漫画」を通じて一気に距離を縮めていく。

芦田愛菜ありきの作品?

私自身、かつては同人誌を作っていたヲタクなので、原作漫画の『メタモルフォーゼの縁側』で描かれていた「同じ物が好きな仲間を見つけたときの高揚感」とか「同人誌を作る喜び」とか「イベント(即売会)の楽しさ」は「ホントそれな!」みたいな気持ちで楽しんでいた。

だけど残念なことに映画化された『メタモルフォーゼの縁側』はヲタクとして生きることの喜びや高揚感ではなく、ヲタク趣味を持つパッとしない高校生「うらら」の成長物語として作られていた。ヲタクの喜びが描かれていない『メタモルフォーゼの縁側』は原作漫画とは別物だった。

残念ながら映画化された『メタモルフォーゼの縁側』は芦田愛菜ありきの作品で芦田愛菜が生かされるような物語になっている。

映画を観ながら「何かにハマっているときのヲタクの生活って、この映画に描かれている100倍くらい楽しいから! ヒロインみたいにイジケている暇なんて無いから!」と心の中で叫んだことか。

ヲタクじゃなくて『メタモルフォーゼの縁側』を観た人に言いたい。「ヲタクの生活ってメチャクチャ楽しくて『萌えのために生きてる』くらいまではありますよ」と。

映画の『メタモルフォーゼの縁側』からはヲタクの喜びや高揚感は伝わってこなかかった。

宮本信子の底力を感じた

正直なところ映画版の『メタモルフォーゼの縁側』は私にとって残念過ぎる作品でしかなかったのだけど、宮本信子の演技は圧巻だった。

先に「ヲタクの喜びや高揚感は伝わってこなかかった」と書いたけれど、宮本信子だけはヲタクの喜びや高揚感を体現してくれていた。

  • 好きなことを語る時はつい早口になっちゃうところ
  • 毎日ウキウキしちゃうところ
  • 唐突に人生バラ色になっちゃう感じ

……宮本信子。凄いな!

宮本信子の演技は「ヲタクあるある」そのものだった。映画版の『メタモルフォーゼの縁側』を観たことで素直に良いと感じたのは宮本信子の演技だけだった。

原作とは別物として観るならアリ

原作漫画のファンとして『メタモルフォーゼの縁側』を観た私には映画版は受け入れ難いものだったけれど「原作漫画とは別物だと考えたら悪い作品じゃない」とは思う。

ヲタク云々…ではなく「パッとしないヲタクの女子高生が年上の女友達と付き合っていく仲で成長していく物語」としてならアリ。

なんだかんだ言って芦田愛菜は好感度高いし演技だって下手じゃない。ハッピーエンドで終わるのも気持ちが良いし、特にツッコミを入れる要素は見当たらない。

映画版『メタモルフォーゼの縁側』。私自身は好きになれなかったけれど悪い映画ではないと思う。

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白い木蓮の花の下で
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