研究本ともエッセイともつかぬ1冊。「横丁・路地ファンブック」と呼ぶのが1番しっくりくるように思う。
街歩きやぶらぶら歩きが好きな人にオススメしたい。ハードカバーなのだけど、新書か文庫本サイズがあると嬉しい。
街に出掛ける用事がある時、カバンに1冊忍ばせておきたい。作者は東京・柴又生まれで「横丁・小径学会」世話人なのだとか。
横丁と路地を歩く
横丁を発見して、路地を楽しむ。横丁と横町はどう違う?横丁はいつ生まれ、どのような決まりがあるか?一度は行ってみたい全国の横丁ガイドつき。
アマゾンより引用
感想
作品の前半部は横丁と路地の定義や歴史。路地の成り立ちなどについての説明が書かれている。いささか教科書的なので「ビジュアルファンブック」的な物を期待しているとガッカリするかも知れない。
しかし、自分の興味がある事については知らないよりも知っていた方が、より面白くなるもので、街を歩いていると、つい路地に入っちゃうタイプの人なら豆知識的な事は知っておいて損はない。
後半は全国の路地・横丁紹介。自分の知っている路地や横丁の部分を読むのも面白いし、行ったことの無い土地の路地や横丁の事を知るのも面白い。
私が「行ってみたい」と思ったのは東京の路地と横丁。
東京って地方の人間からすると大都会のイメージがあるのだけれど「どこかで見たことのある風景」や「ちょっと懐かしくなっちゃう風景」も意外と残っているようだ。
東京へは何度か行った事があるけれど、次に行くときは観光地ではない街歩きがしたいと思った。
そして私が住んでいる大阪の路地と横丁。かっぱ横丁や法善寺横丁は私の大好きな場所。
天神橋筋商店街が紹介されていたけれど、どうせ商店街を紹介するなら、もう少し地味と言うか地域密着型の商店街の方が良かったな……と思った。路地も横丁も人間の生活があってこその魅力だと思う。
この本は読者に「面白かったけれど、ちょっと物足りないな」という気分をにさてせくれる。
その物足りない感は自分の足で歩いて、自分の「横丁・路地ファンブック」を作れば良いのだ。読むだけでなく自分の足で歩くことで味わい尽くせる不思議な作品だと思う。