私が働く医療型児童発達支援センターの保育部門は未就学児が対象なので、6歳になると地域の小学校や支援学校に進学することになる。
スマートな言い方ではないけれど障害の程度が重い場合、悩むことなく支援学校に進学するので問題はないのだけれど「地域の普通小学校の支援級でもやっていけるのでは?」とか「うちの子は医療的ケア児だけど知的障害はないから、地域の小学校の普通級でも良いのでは?」ってなった時、保護者の方はめちゃめちゃ悩むことになる。
障害の程度によって「子どもにとって、どこで学ぶのが適切なのか?」ってところは軽々しくどうのこうのは言えないのだけど、個人的には保護者の方が「いけるかな?」って思う先ではなくて「より手厚く支援してくれる進学先」の方が良いと思っている。
支援学校に入学すると、将来的に支援学校の中等部から高等部に進むことになることが多いのだけど、ここで問題になるのは「支援学校の高等部を卒業しても高卒にはならない」ってことだ。
「支援学校を卒業しても高卒扱いにならない」ってところが引っ掛かって「出来る事なら地域の小学校に行って欲しい」と思う保護者の方が多いのだけど、私は「ちょっと待ったぁ!」と言いたい。
療育園は手厚過ぎるほど手厚い支援の中で子ども達の保育を行っているけれど、その先…となるとそうはいかない。
「合理的配慮をしてもらったら普通級でも大丈夫」と思ったとしても地域の小学校の普通級の場合、担任の教師は35人の子どもを1人で指導しなくちゃいけない。
障害への理解の深い人が担任になってくれたらアリかも知れないけれど、今の日本の体制で担任に「合理的配慮」を求めても思うようにはいかないと思う。
そして「出来ることなら支援学じゃなくて地域の小学校の支援級に」と考える場合。支援級となると普通級より手厚い配慮は期待できるけれど、支援級の先生は「障害児教育のプロ」ではないので支援学校の先生ほどの知識を持っていないケースが多い。
先日あった研修でも障がい児教育の研究をされている大学教授が「支援学校や支援級の視察に行って感じるけれど小学校1年生と言っても支援学校と支援級なら支援学校の生徒の方が落ち着いていて学習できている」と言うことを話しておられた。
「出来れば普通の子と同ように育てたい」と思う保護者が多いのだけど「みんなと同じ教育」よりも手厚い配慮を受けて丁寧に支援&教育を受ける方が成長する幅が大きいのでは…と思う。
また地域の小学校に入った場合、障害のある子(発達・知的・身体に関わらず)が健常児達と上手くやっていけるかどうか…と言う問題もある。
放課後等デイサービスで働いていた時、パッと見では障害児だとは分からないし話をしていても健常児としか思えないよね?」って感じの自閉傾向のある発達障害のお子さんがいたけれど、保護者の方の希望で地域の小学校の普通級に進学→普通級でやっていけず支援級→支援級でも上手くいかず不登校→中学進学を機に支援学校へ…言うパターンがあった。
最初から支援級なり支援学校に入学していたらプロの支援のもとで色々なことを学べただろうに、普通級に入学したばかりに6年間不登校で家で過ごすことになるなんて、やるせないにもほどがある。
2023年の春。何人かのお子さんが卒園していくのを見送ったけれど、私だけでなく他の先生方も「支援学校で手厚い支援を受けた方が良いと思うんだけど…」と感じるお子さんが地域の小学校に進学していった。正直不安しかないけれど、子どもの進路を決めるのは職員ではなく保護者なのだからどうしようもない。
国連からインクルーシブ教育の勧告を受けて日本もインクルーシブ教育を進めていこう…みたいな雰囲気はあるけれど、今の日本の現状ではインクルーシブ教育なんて夢のまた夢。
来春も卒園生を送り出すことが決まっているけれど、たまたま来春卒園される方は支援学校一択…って感じなのでモヤモヤした気持ちで送り出す事はなさそうだ。
もちろん今日、ここに書いた内容はあくまでも「医療型児童発達支援センターで働く保育士の個人的な意見」でしかない。考え方は人それぞれだし、正解なんて分からない。
ただ、障がいを持った子の進路を考えるときに「普通の子と同じ経験をさせて同じように育てたい」って考えはちょっと危険ですよ…ってことを声を大にして言いたい。もちろん…こんな事はココでしか言えない(書けない)んだけどね。