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映画『コン・ティキ』感想。

4.0
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『コン・ティキ』は ノルウェーの人類学者で海洋生物学者、トール・ヘイエルダールが記した実体験に基づく『コン・ティキ号探検記』を映画化した作品。

トール・ヘイエルダールの書いた『コン・ティキ号探検記』を読んだことのある方もおられるだろうし、子ども向けに簡単にした『コンチキ号漂流記』を読んでワクワクした方も多い気がする。

定番物の漂流記であり、しかも実話に基づく作品なので今回はネタバレを含む感想です。ネタバレNGの方はご遠慮ください。

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コン・ティキ

コン・ティキ
Kon-Tiki
監督 ヨアヒム・ローニング
エスペン・サンドベリ(ノルウェー語版)
脚本 ペッター・スカヴラン(ノルウェー語版)
アラン・スコット(英語版)
出演者 ポール・スヴェーレ・ハーゲン(英語版)
アンドレス・バースモ・クリスティアンセン(英語版)
オッド・マグナス・ウィリアムソン(英語版)
アグネス・キッテルセン(英語版)
グスタフ・スカルスガルド
ヤーコブ・オフテブロ
トビアス・サンテルマン
音楽 ヨハン・セデルクヴィスト
公開 ノルウェーの旗 2012年8月24日
日本の旗 2013年6月29日

ざっくりとこんな内容

ノルウェーの文化人類学者で海洋生物学者、トール・ヘイエルダールは、ある定説に疑問を抱いていた。

南太平洋の諸島に住むポリネシア人の起源はアジアであると言うところが定説だったが、トールは南米のインカ文明とポリネシア文明との相似点が多いことから、ポリネシア人の祖先が南米から海を渡って渡来したアメリカ・インディアンであると思っていた、

実際、トールはポリネシアの島で発見した石像を見て自分の考えを確信する。

トールは自分と共に行動してくれる仲間を集い、インカを征服したスペイン人たちが描いた図面を元にしてバルサや松、竹、マングローブ、麻など、古代でも入手が容易な材料のみを用いて、一隻のいかだ…コンティキ号を建造して自説を立証するべく船出するのだが……

漂流浪漫!

『コン・ティキ』は漂流記ではあるものの『十五少年漂流記』とか『蠅の王』とか古いところでは『青い珊瑚礁』のような「漂流して無人島に流れ着いちゃって救助を待っていました」ってタイプの物語ではない。

敢えて言いうなら…感想は書いていないけれけど『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』に近い。海上での漂流譚がメインになっているので、無人島生活云々よりも海洋浪漫要素が高い。

乗組員(コン・ティキ号は船と言ってもイカダだけど)達が力わ合わせて自分達が生き延びるために頑張る物語。

誰だって死にたくない。だから頑張るしかない…と言う単純な理由から、全員本気で頑張らざるを得ない状況。

「その設定でドラマが生まれない訳がないよね?」って話で、狭い空間(海上なのである意味広い?)での物語でありながら、小さなエピソードをどんどん積み重ねていく中で、登場人物達のキャラクターが際立っていく。

夢追い人は結婚しちゃ駄目

『コン・ティキ』の主人公であり、文化人類学者のトール・ヘイエルダールは妻子ある男性。作品の冒頭部では妻と研究旅行をしている場面が映し出されているが、歳月を経て2人は2人の子どもを授かり、妻と2人の子ども達はノルウェーでトールを待つことになる。

家族が離れ離れで暮らす…と言うと日本にも「単身赴任」なんてものがあるけれど、家族は一緒に暮らしてこそのものだと思う。

トールにはトールの言い分があるのだけれど、妻や子ども達にもそれぞれの言い分がある。妻は家族を放置して自分の研究に突き進んでしまうトールとの離婚を望み、夫妻は離婚することになるのだけれど「そりゃ、そうなるよね」って話だ。

男性にも女性にも「結婚しちゃ駄目なタイプの人」ってのが一定数いる。正確に言うなら「結婚しちゃ駄目」ではなくて「子どもを持っちゃだめ」ってところだろうか。

結婚して「養育しなければならない子ど」が出来てしまうと、そこには責任が付きまとう。自分のやりたい事とか夢とか希望とか言ってる場合じゃない。トールが妻から三行半を突きつけられてしまったのは「さもありなん」って感じがした。

ポリネシア人のルーツ

さて。トール・ヘイエルダールが夫として、父親として残念な人だったのは事実だろうけど冒険家としても優れていたことも事実だ。なんと言ってイカダで太平洋を航海する偉業を成し遂げたのだもの。

だけど現在はトール・ヘイエルダールの言う「ポリネシア人は南米から来たのでは説」ではなく「アジアから少しずつ南下してきた説」の方が定説とされている。

ポリネシア人の祖先はオーストロネシア語を話すモンゴロイド系の民族で、元々は華南や台湾にいた達が長い年月を経て少しずつ南下したとのこと。DNAの研究からもポリネシア人はオーストラロイド、パプアメラネシア人、東アジア人などの要素が含まれているらしい。

……なのでポリネシア人が南米からイカダに乗って「おりゃぁぁぁ!」と太平洋を公開してきた訳でなさそうだ。

冷静に考えてみれば「イカダで太平洋を航海する」なんてクレイジーが過ぎる。だけど、それをやり遂げてしまったトール・ヘイエルダールと彼と共に航海した仲間達の功績は素晴らしいと思う。

ポリネシア人のルーツを求めて航海したトール・ヘイエルダールの冒険の結果はともかくと、映画『コン・ティキ』は海洋冒険ロマン作品として秀作だと思う。

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