池井戸潤…と言うと『下町ロケット』や『半沢直樹』がドラマ化したこともあって、今や国民的流行作家。
私も一時はハマっていて中でも『シャイロックの子ども達』や『空飛ぶタイヤ』が好きなのだけど、最近はちょっとご無沙汰していた。書店には必ず平積みされているし、図書館に行っても必ず目につく場所においているので「いつでも読める」と思っていたら、なんか読まない…ってあのパターン。
今回の『ハヤブサ消防団』は田舎の消防団が舞台になっている…と知り「いつもの華やかな世界とはとはちょっと違うパターンなのかな?」と興味が出たので手に取ってみた。
今回は大事なところは伏せておきますが軽くネタバレを含む感想なのでネタバレNGの方はご遠慮ください。
ハヤブサ消防団
- 主人公の三馬太郎はミステリ作家。東京での暮らしに見切りをつけ、亡き父の故郷であるハヤブサ地区に移り住んだ。
- 地元の人に誘われて太郎は消防団に入団。消防団に入ったことも手伝ってハヤブサ地区に溶け込んでいく。
- しかし、のどかに見えた集落には密かに闇が迫っていた。ハヤブサ地区に起こる謎の連続放火事件に隠された真実とは?
感想
前評判が高かった…ってこともあって、私の中の期待値が高過ぎたのかも知れないけれど、ちっとも面白いとは思えなかった。巷で評判の良い作品を「面白くなかった」って言うのは気が引けるのだけど、面白いい思えなかったのだから仕方がない。
思うに…ちょっと色々詰め込み過ぎなんじゃないかと。
- 素敵な(?)消防団での日々。
- 山間部のソーラーパネル開発。
- 新興宗教の恐ろしさ。
- 物語を彩る謎の知的美女。
- 田舎の人間関係の良し悪し。
一応「ミステリ仕立て」って事になっているけれど、色々と詰め込み過ぎてミステリとしてはパッとしない。田舎の人達の生活と新興宗教連続放火に美女まで投入している。上手く料理してくれていたら素敵だったと思うのだけど゜『ハヤブサ消防団』に関しては「いや…それは無いわぁ」とか「都合良過ぎでは?」みたいな設定が鼻についてしまった。
あと時代劇的…と言うのか、ワンパターンの繰り返しもツマラナく感じさせる原因だったと思う。「事件起こる→居酒屋集合→村民の家に行く→再び居酒屋」みたいな感じで「この人達は居酒屋で飲み食いしないと死ぬの?」と言うほど、居酒屋に入り浸っている。
「田舎の消防団の人付き合いの素敵さ」みたいなところを描きたかったのかも知れないけれど、私など「そりゃあ若者が田舎から逃げ出すのも納得ですわ」みたいな気持ちにってしまった。
男は昼間働いて、休みの日は消防団。夜は宴会。休みはゴルフと消防団の旅行。子育ては嫁さんに丸投げ…みたいな世界観を令和の時代に持ってきた池井戸潤には恐れ入る。「田舎のリアルを描きました」と言ってしまえばそうなのだろうとは思うのだけど。
新興宗教云々の流れはあまりにもペラッペラでリアリティがなかった。事件の根っこに居座る一族の物語については「たまたま」「偶然」の要素をツッコミ過ぎていたし、寺と新興宗教の関係についても疑問しか残らなかった。
「小説」として読むとツッコミどころが多過ぎたけれど「これはドラマ原作ですから!」と言い切ってくれるのなら「あ…そうですか。なるほどですね」と思わなくもない。
- 居酒屋での楽しい飲み食い。
- 消防団の男達。
- 謎の連続放火。
- 美女。
……映像ならアリだ。連続ドラマなら楽しめる気がする。
だけど私はドラマより小説が好きな人間なので「池井戸潤はもういいかな」って気持ちになってしまった。今後は、何かよほどの事情がないと池井戸潤の作品は読まないと思う。