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矢印 松尾スズキ 文藝春秋

松尾スズキが3年ぶりに長編小説を出したと聞いて手に取ってみた。

松尾スズキと言うと演出家のイメージが強いけれど、小説家でもある。その辺りは中島らもと方向性が似ているか知れない。

私は松尾スズキの小説の中では『クワイエットルームにようこそ』が大好きなのだけど『矢印』は『クワイエットルームにようこそ』に方向性が似ている気がした。ただし『矢印』の方が何倍も支離滅裂で読み難い作品ではある。

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矢印

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ザックリとこんな内容
  • 放送作家見習いの「俺」は、十年間師匠と仰いでいた人物が自殺した日に映画館で偶然出会った女・スミレにいきなり結婚を申し込む。
  • スミレは年上の夫と離婚したばかりだった。
  • 俺とスミレは、酒浸りの日々を送るようになり……

感想

なんだかこぅ…猛烈に脂ぎった作品だった。読後の胸焼け感が半端ない。もしかしたら松尾スズキは小説で何らかの賞が欲しいのかな…と思ったり。

作品のテーマ…って訳じゃないけど、もう最初から最後までアルコール依存症の話だった。

  • 主人公の師匠がアルコール依存症。そして自殺。
  • 師匠の弟子の1人もアルコール依存症で精神病に入る。
  • 主人公が結婚した女性も結婚後、アルコール依存症に。
  • 主人公もアルコール依存症に。

松尾スズキはどうして、ここまでアルコール依存症にこだわった作品を書いたのか?

作品は支離滅裂な物語なのだけど「アルコール依存症じゃ、やりかねないな」みたいな気持ちになってしまうよえなエピソードをミルクレープのように積み重ねていく。

たぶん…だけど松尾スズキの作品を読む人って、芝居好きの人が多いと思う。そして彼らは『矢印』を読んで「もしかして中島らもをリスペクトした作品なの?」と感じたのではないだろうか? 少なくとも私は中島らもを意識して書いた作品だと感じた。

松尾スズキと中島らもと言うと雑誌『BRUTUS』での松尾スズキの回答が炎上した時に、散々っぱら中島らもと比較されていたのが記憶に新しい。

……実のところ松尾スズキと中島らもって作品の方向性も似ているし、エッセイとか人生相談が得意…ってところも、まるで同じ。ただ並べてみると松尾スズキは中島らもに一歩及ばない印象を受ける。

さて。『矢印』に話を戻すけれど、読みやすい文章なのでサクサク読めるし、話もスピード感があってそこそこ面白いけれどアルコール依存症ネタばかりで退屈だった。中島らものように自分自身がアルコール依存症を極めていれば、もしかしたら退屈でない感じで書けたのかも知れないけれど。

そして何より残念だったのは唐突に出産ネタを放り込んできたところ。もともとリアリティに欠ける話ではあるけれど、それにしてもリアリティの欠片もなくて酷過ぎだった。

どうしちゃったの松尾スズキ?

色々と酷くてちょっと心配になってしまった。何だかんだ言って、私は松尾スズキが好きなので残念だった。次の作品に期待したいところだけど、どうなることやら。

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白い木蓮の花の下で
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