『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』は『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』の続編にあたる作品。
27年前にペニーワイズと戦って「血の誓い」を立てたルーザーズのメンバー27年の時を経て、ふたたびペニーワイズと対決する。
……めちゃめちゃ面白かった。
是非『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』の答え合わせだ…って事を頭に置いて観ることをオススメしたい。「はぁぁ~。そうだったのかぁぁ」みたいな喜びがある。
まだ『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』を観ていない人がいたら『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』をセットで観ることを全力でオススメしたい。
今回は盛大なネタバレ込の感想なのでネタバレNGの方はご遠慮ください。
IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。
ざっくりとこんな内容
あらすじを紹介する前にまずは人物紹介から。前作の設定も含めて今作での状況。
ルーザーズ(負け犬クラブ)のメンバー
- ビル・デンブロウ 吃音の少年。「負け犬(LOSERS)クラブ」のリーダー。弟のジョージーが雨の日にペニーワイズに殺害されている。現在の職業は小説家。
- ベン・ハンスコム 子ども時代は太ったいじらめれっ子だったが、現在は痩せてイケメン化。インテリアデザイン会社の社長になっている。
- リッチー・トージア ビルの親友で眼鏡をかけている。現在はコメディアンとして活躍中。
- ベバリー・マーシュ 父親から性的暴行を受けていた少女。現在は夫とブランドを立ち上げ、ファッションデザイナーだが、夫からDVを受けている。
- スタンリー・ユリス ユダヤ司祭の息子の息子で臆病な性格。会計士として働いており結婚もしていたが、血の誓いの知らせを受けて自殺。
- マイク・ハンロン アフリカ系の少年。屠殺業の見習いをしていたが、ルーザーズクラブのメンバーの中で、ただ1人地元デリーに残り、図書館で働いている。
- エディ・カスプブラク 喘息持ちの少年。過干渉の母親に行動を縛られている。現在はリスクマネジメント業に従事している。
ペニーワイズ 不気味なピエロ
前作から27年後のデリー。同性愛者のカップルを見掛けた地元の不良が2人を襲撃。1人が散々殴られたあげくに川へ放り込まれ、挙句の果てにペニーワイズに殺されてしまう。
ベリーに残っていたマイクは警察無線で事件を知り、ルーザーズのメンバー全員にデリーに戻るよう連絡をするが、スタンリーはマイクと電話で話した後に自殺する。
デリーの中華店でルーザーズの仲間達は久し振りに再会する。
近況を報告し合い、スタンリーだけが姿を現さないことを気に掛けながらも、皆楽しい時間を過ごすが、食後に運ばれた6つのフォーチュン・クッキーに入っていたおみくじは、スタンリーの身に何か起きたことを示していた。
ベバリーがスタンリーの家に連絡し、妻から自殺したこと聞いて怯えたエディとリッチーは、町を出ると言い宿泊所へ荷物を取りに戻る。
マイクは、見せたい物があると必死にビルを説得。同じ頃、ペニーワイズは蛍を使って幼い少女を誘い出し、言葉巧みにおびき寄せて食い殺す。
一方、地元の問題児で過去にマイクやベンを虐めていたヘンリーは、父親を殺害後精神病院へ収監されていたが、ペニーワイズの手助けで病院を脱走する。
マイクは、長年ペニーワイズの抹殺方法を模索していた。18世紀初頭に先住民が使っていた遺物をビルに見せたマイクは、これでペニーワイズのことが分かると説明。ペニーワイズは隕石の落下と共に地球へ来た生命体だった。
その頃、町の宿泊所へ戻った残りのメンバーは過去にペニーワイズの口から放たれたデッドライトを浴びたビバリーに予知夢を見る能力が備わっていたことを知る。
ビバリーは、スタンリーの死を始め、ルーザーズの全員が死ぬ悪夢を見たと告げる。
宿泊所へやって来たマイクとビルは、団結してチュードの儀式を行えばペニーワイズを倒せると皆を説得し、27年前の過去でそれぞれ自分にとって思いが残る記念の品を見つけ図書館で合流するようマイクは全員に指示するが……
スタンリーの自殺
『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』はスタンリーの自殺から始まった…と言っても良いと思う。
「なんで死ぬのよ、スタンリー? 妻もいるんだし、血の誓いなんて無視しちゃえばいいじゃない?」
……って思ったけど、スタンリーは死んでしまったし、死ななければいけなかったのだと思う。
前作の『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』から書かれてきたことだけど、ペニーワイズは人間の「恐怖」に呼応して力を増すが、恐怖に打ち勝った人間には力を発揮することができない。
スタンリーは自分の臆病さを知っていて「どうしても行けない」と思ったのだけど、それでもなお仲間達を裏切ることは出来なかったのだ。
そして、そのスタンリーが考えた末の行動がなければ、ペニーワイズに勝つことはできなかった。
リッチーがゲイだったこと
前作でルーザーズの仲間達は全員、明確な弱点(恐怖)を抱えていた。
弟が死んでしまった事だったり、母親の呪縛から逃れられなかったり、父親から性的虐待を受けていたり。
ところがリッチーだけはイマイチ「これぞ」と言う弱点がなくて、前作からちょっと気になるところではあった。リッチーは前作で「ピエロが怖いんだ」と語っていたものの具体的な理由は示されておらず、リッチーの恐怖だけは曖昧にぼかされていた。
だけど今回の『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』ではリッチーの恐怖と弱点が明らかになる。
リッチーはゲイで子どもの頃から自分がゲイだという自覚があり、それを人に知られることを恐れていたのだ。前作でリッチーは何かにつけてエディと卑猥なことを言い合っていたけど、あれは自分の秘密を隠すためだったんだなぁ。
それにしても気の毒なのはリッチーはエディ(喘息持ちの少年)を好きだった…ってこと。
そう言えばリッチーとエディは前作も一緒に行動することが多かったし、『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』では、なんだかんだと一緒に行動している。
さらに言うなら臆病風に吹かれて戦いを拒否したエディを説得したのはリッチーだった。リッチーは少年時代からエディをしっかり見ていたからこそ、リッチーの勇敢さを誰よりも知っていたのだろう。
ラストシーンでバッシー公園のキシング・ブリッジ(キスの橋)にリッチーが「R+E」…(リッチー&エディの意味)と刻む場面は涙を禁じ得ない。
女1。男2の恋物語
前作から観ていた人は「ヒロインのベバリーは誰と結ばれるのか?」ってところが気になっていたと思う。
安心してください…ベバリーはあなたが応援していた人と結ばれました。
- ベバリー 赤毛の美人だけど父親から性的虐待を受けていた
- ビル 吃音だがリーダー格の少年
- ベン デブの転校生。頭が良くてロマンティックだが完全にシラノドベルジュラックポジジョン。大人になってからは痩せてイケメン化している。
ベバリーは子ども時代にベンから彼女を称えるポエムを貰っているけれど、実のところ差出人はビルだと思い込んでいる。「ちょっとベバリー、本当のことを知ってくれよ。あなたの王子様はベンなんだよ」とヤキモキしていたのは私だけではないはず。
話が進む中でベバリーは自分にポエムを送ってくれた人がベンだと知り、ベンと結ばれる。
…って、ハッピーな感じで収まっているけれど「そりゃそうだよ。だってベンは成長してイケメンになってるもんな? 結局、ベバリーは男の顔で選んだのでは?」って思ってしまった人も多いはず。安心してください私もです。
だけど、そこのところは映像で見せる作品なので仕方がないのかな…と諦めるしかない。
「キスシーンは視覚的に美しい方がいいだろ?美女とブサメンとのキス観るより、美男美女のキスの方が観たいだろ?じゃあベンをイケメン化するしかないだろ?」って話。
映画の世界において美男美女は大正義…ってことだ。
少し長過ぎた感はあるけれど……
私は『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』を観て面白かったと思ったし、満足しているけれど「少し尺が長過ぎたな」とも思った。
似たような襲撃が何度も何度も続くので、慣れてきて怖くなくなっちゃうのだなぁ。「怖い」と言う意味では前作の方がずっと怖い。
だけど少年少女の成長物語としては素晴らしいと思う。
ルーザーズクラブの仲間達は全員、自分の弱さと向き合って成長しているし、彼らの絆は本物だった。だからこそ彼らはペニーワイズに打ち勝つことが出来たのだと思う。
完全なハッピーエンドではなかったことが残念ではあるけれど、それも「人生の痛み」なのかな…と思ったりもする。