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向島 領家高子 講談社

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読みたくてたまらなかった『向島』三部作の第一作目を、やっと読むことができた。

私は三部作の最終作から読み始めたので、過去を遡っていく形になってしまったのだけれど、逆走など気にならないくらい面白かった。

作品としての面白さ云々よりも「私の趣味に合った」と言った方が適切かも知れない。そこに描かれている世界は勿論のことだが、ヒロインの芳恵にゾッコン惚れこんでしまったのだ。

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向島

向島生まれの著者が涼しやかに描く現代の芸者25歳の全く新しい肖像

花街という、一見古くて新しい世界に生きる女性の、成熟と憂愁が、気品ある文体とともに生々しく伝わってくる。――渡辺淳一

アマゾンより引用

感想

もしも私が男だったら……それも、お金持ちで遊び上手な40代以上の男だったらなぁ……と思わず夢想してしまった。

ヒロインの芳恵は「女惚れする女」と言うよりも「男だったら、こんな女が好み」というような意味で、私のタイプだったのだ。

キリッと芯が通っているのに、どこか放っておけない頼りなさがあって、頭が良いのに、妙に素直で古風なところがたまらなく良い。

私が、そういう立場の男だっら惚れてしまうだろうし「こいつを幸せにしたい。守ってやりたい」と思うだろう。もっとも芳恵は、ただ男から守られているだけの女性ではないのだけれど。

自称フェミニストとしては「お金で女性を囲う」なんてことは賛成できない。

あちらの世界で言うなら野暮な考え方なのだろうが、やっぱり女性の立場からすると「ちょっとなぁ」という思いが、どうしても付いてまわる。

だけど、この小説は「あー。男だったら、1度は芸者遊びがしてみたいだろうなぁ」と思ってしまうくらい、粋で素敵な世界だった。

ああいう日本的な情緒があって、自分に都合の良い空間を提供してくれる場に惹かれるだなんて、私も年を取ったってことなのだろうか。10代の頃なら、間違いなく反発していた世界だろうに。

「擬似男性モード」でヒロインに惚れ込んでしまったのだが、女性の目から見ても「素敵だなぁ」と思う部分がいくつかあった。

特に良かったのは「私は自立して生きている」という気甲斐性。自分の仕事に信念と誇りを持って淡々と生きる姿勢は、私も見習いたいと思った。

文庫化されたら三冊とも購入したいと思う。

長い付き合いが出来そうな作品に巡り合えて、本当に嬉しい。

「どんなに面白くても再読したいと思わない本と、繰りかえし読みたくなる本の違いって、なんだろう?」と思ったことがあるけれど「自分と作品の相性」なんじゃないかな……なんてことを、ふと思った。

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