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死者にこそふさわしいその場所 吉村萬壱 文藝春秋

お久しぶりの吉村萬壱の作品。前回読んだ『出来事』はイマイチ好じゃなかったけれど、今回の『死者にこそふさわしい場所』は吉村萬壱らしい短編集で面白かった。

ただ、この「吉村萬壱らしい」ってことは「吉村萬壱らしい気持ち悪い文章」ってことなので、気持ち悪い系の文章が苦手な人にはオススメしない。

ただ吉村萬壱の『臣女』とか『ボラード病』が好きな人は楽しめるかと思う。

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死者にこそふさわしいその場所

ザックリとこんな内容
  • 表題作を含む6編からなる短編集。
  • セックスの回数を記録する愛人、徘徊癖のある妻を介護する老人、アパートのドアが開きっぱなしの裸男、朝どうしても起きられなくなってしまった女…等、風変わりな人が主人公。
  • 主人公達の共通点は「折口山町で暮らしている」と言うこと……

感想

『死者にこそふさわしいその場所』はじわっと怖い…と言うか地味に不愉快になるタイプの作品なので気持ちが落ち込んでいる時や「本を読んで元気になりたい」と思ってる時に読んではイケナイと思う。イケナイ…と言うよりも読まないことをオススメする。

吉村萬壱の作品は総じて読者に気力と体力を消耗させるのだけど『死者にこそふさわしいその場所』も気力体力の消費量はなかなかのものだ。

ホラー小説ではないので「怖くてたまらない」とか「冷や汗が出た」みたいな強烈な怖さはないものの、じわっと気持ち悪くて怖くて、気がつくと絡め取られている…ってイメージ。

お話毎に主人公は変わっていくけれど、彼らは全員、折口山町で生活していて、駅前のスーパー「おりぐっちん」で買い物をする。そもそも「おりぐっちん」なんて奇妙な名前のスーパーに違和感があるし、その変な名前を変だと思わない世界観が微妙に気持ち悪い。

『死者にこそふさわしいその場所』を読んでいて今回、どうしても気になったのは「チャバネゴキブリ」と言うキーワード。

それぞれの作品の中でチャバネゴキブリが登場するのだけど、使い方がどうにも不愉快。残念ながら日本の住宅にはゴキブリが出てきがちではあるので「家にいる害虫」として登場するなら分かるのだけど、作品によってはある人物の自家用車を「チャバネゴキブリに似ている」と言う。いくらなんでも親しい人間の自家用車をチャバネゴキブリに例えるとか酷過ぎる。

吉村萬壱の書く人間は妙ちきりん過ぎて「そんなヤツいないでしょ?」ってところに落ち着くのだけど「もしかして」と思ってしまうから不思議だ。「もしかして」と言うより、むしろ「その感覚ちょっとだけ分かるかも」っところだろうか。

吉村萬壱の作品は気持ち悪くて読んだ後になんとなく嫌な感じが残るくせに「なんか凄い」と思うし「また読みたい」と思ってしまうから不思議だ。

『死者にこそふさわしいその場所』はなかなか読み応えのある作品なので、吉村萬壱が好きな人にはオススメしたい。気力と体力が充実している時に読んで戴ければ幸いです。

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白い木蓮の花の下で
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