『臣女』が2014年度最後の読書になると思うのだけど、最後に凄い物を読んでしまった。
主人公は高校教師と小説家を兼業している男。彼が浮気をしてしまった事をキッカケに、彼の妻が突然巨大化していくと言う不条理小説。カフカの『変身』のような感じ。
吉村萬壱は『ハリガネムシ』で芥川賞を受賞しているけれど、今まで1冊も読んだことがなかった。
もっと早く読むべきだったと公開している。
臣女
ザックリとこんな内容
- 主人公は高校教師と小説家を兼業している男。
- 男の浮気をキッカケにして、妻が巨大化していく。
- 妻は巨大化するだけでなく糞尿を垂れ流し、不明瞭な言葉を発しながら怪物へと変化していく。
- カフカの『変身』とも島尾敏雄の『死の棘』とも違う愛憎溢れる不条理な世界。
感想
一言で言ってすっごく感じ悪い。
読後感も悪いし「私はどうしてこんなに嫌な気分になるために読書しているんだろう?」と思いつつ、それでも面白かったのだからどうしようもない。
主人公の妻は巨大化するだけでなく、怪物のように異形化していき、言葉もロクに話せなくなってくる。主人公は妻の汚物の世話をしたり、食事を調達したりする事に明け暮れる。
これぞ文学。こんな嫌な話、よく書けたなぁ……と感心する。
そして嫌な話なりに面白い。不倫する主人公。気違いじみた母親。主人公の元教えだった妻。不倫相手の女。それぞれ体臭が漂ってきそうなほど生き生きと描かれていて、胸クソ悪いながらも目が離せないのだ。
個人的には物凄く面白かったのだけど、誰かに勧める事が出来ないのが非常に辛い。
面白いのは間違いないけど、、こんなに感じ悪くて救いのない作品を誰かに勧めるなんて私には出来ない。
流石に映像化は無理だろうけれど、この作品を映画で観てみたいと思った。
そして映画館で思い切り鬱な気分に浸りたい。今年最後を飾るに相応しい良い1冊だった。