表紙の装丁が素敵だったので手にとってみた。
パラパラめくると、着物の話などが書かれてあったから「明治生まれのセレブな奥様の書いた素敵エッセイかな」と思ったのだが、良い意味で裏切られてしまった。
ひさしぶりに、作家惚れした。セレブな奥様の書いた素敵エッセイというのは、ある意味間違いではなかったが、それ以上に素敵だったのだ。
今昔
作者の森田たまは日本の伝統的なことを愛しながらも、非常に進歩的な考え方の持ち主。
サッパリとして語り口は、作者の性格から滲み出るものだろう。妻が夫の所有物だと認識されてしまうような封建的な社会を憂いたり、たいして飲めもしないのにお酒を収集してみたり
。日々の生活を飄々と楽しんでいる様が、とても良かった。
お育ちの良さゆえに、世間知らずで、いささか視野の狭いところはあるけれど、自分の意思をハッキリ持って、楽しいことを追いかけつつ我が道を行くあたりは、見習うべきところがある。
夫も子供もいる人だけど「妻」としての印象よりも「女性」あるいは「人間」としての印象の方が際立っている。精神的に自立しているのだろうなぁ。
頭の良さが伺えるスッキリとした文章は読みやすくて、いままでこの作家さんを知らなかった自分に吃驚した。
たった1冊、読んだだけなのに、すっかり森田たまファンになってしまった。森田たまについて、もっと知りたいと思う。
こういう良い出会いがあるから、新しい作家さんの開拓はやめられないんだなぁ。
久しぶりに、惚れることの出来る作家さんと巡り合う幸せを満喫させてくれた1冊だった。