久しぶりに私好みの恋愛小説に出会った。
ものすごく暗くて救いのない話である。何しろ主人公は実の兄妹で愛し合ってしまうのだから。
連れ子同志だと思っていたのに、実は血の繋がった兄妹だった…という設定。
短編連作になっていて、兄妹の禁断の恋を中心にして、その周囲いる人々の恋と愛が描かれていた。どれもこれも、暗くて酷い。
星々の舟
第129回(平成15年度上半期) 直木賞受賞。
禁断の恋に悩む兄妹、他人の男ばかり好きになる末娘、居場所を探す団塊の兄、そして父は戦争の傷を抱いて……心震える家族の物語。
アマゾンより引用
感想
何故、お金を出してまで、こんな陰気なものを読む必要があるのか…と思うほどに暗いのだけど、そこがまた良かった。
ストーリーの起伏で読ませるタイプの小説ではなくて、感情移入させて読ませるタイプの小説なので、短編小説の主人公達の心情が、ダイレクトに伝わってき「人間って哀しいよなぁ」と思わずにはいられなかった。
主人公達はそれぞれ哀しい物を背負っていて、生きることの切なさを思い知らされた。
決してハッピーエンドではないし、なんだか読後感もやるせないのだけど、やけに満足してしまった。
恋愛小説ってのは、ツボにハマると大抵のことが許せてしまうから不思議である。好みの恋愛小説について、あれこれ書いてみたくなったので、そんなこんなの話の続きは『本の話』にて。
「1人のひとをずっと好きでいるって切ないよな」って思った1冊だった。