松井雪子は初挑戦の作家さん。
図書館で『刺繍天国』の表紙に惹かれて、表紙借りした。
本を読んでから知ったのだけど、元々は漫画家とのこと。大人向けのOL漫画を描いてたらしいのだけど、ちっとも知らなかった。
刺繍天国
胸に蝶、プリズム・スパンコールとビーズの。こんどの恋は逃さない。
恋のすべてが描かれたふたつの小さな物語。
アマゾンより引用
感想
タイプの違う短編『恋蜘蛛』と『愛 弾丸ツアー』の2作品収録。
『恋蜘蛛』は予想外に面白かった。乙女ちっくな題名に惹かれて手に取ったのだけど、刺繍をするのは女性じゃなくて、男性だった。
お縫子のヒロインと、天才的に刺繍をする男の物語。
一応、ヒロインの恋物語……って事なのだと思うのだが、恋愛要素はかなり低め。むしろ、刺繍男のクレイジーっぷりが面白かった。
天才と呼ばれる人達は、どうしてあんなに変なのだろう?
神懸っていると言うか、人外生物と言うか。天才に恋してしまったら、男も女も悲劇だなぁ……と思う。
自分の力で相手を変えることは出来ないどころか、どこまでいっても天才にとっての1番は「熱中している何某か」のことなのだから。
ヒロインはひたむきに刺繍男に恋しているのに、刺繍男はヒロインのことを、これっぽっちも想っていないところが面白かった。
ヲタク的と言うか、とにかく濃度の濃い作品で、最近の若い女性作家さんにはちょっとめずらしい感じ。
栗田有起とか若合春侑に似ていなくもないけれど。ほんのり毒のある感じが良かったと思う。
『愛 弾丸ツアー』は、ちっとも面白く無かった。「OLさんが喜びそうだねぇ」というようなタイプの話で、可もなく不可もなく。なまじっか『恋蜘蛛』が良かっただけに「いっそ、無い方が良かったかも」と思ってしまったほどだ。
はじめて挑戦する作家さんだったのだけど、あと何冊か読んでみたいと思った。