前回読んだ『鉄輪』ほどの衝撃はなかったけれど、そこそこに良かった。
こういう作品って好きだなぁ。ロッキー山脈の渓谷で発見されていた日本人男女の白骨化死体をめぐる物語で、途中、ちらちらと写真が挿入される。
「白骨化死体」が出てくるからといって、推理でもホラーでもない。ただ「彼らはどうして死んだのか?」ということを考えながら、自分の自身について考えたり、アメリカの大自然に妄想するだけの話である。
ロッキークルーズ
いったい何故、あの人がロッキー山脈で白骨死体に?ここで何をしようとしていた?
彼の死の足跡を辿り、私はロッキーへ向かった…。自らの体験を写真と共に綴る小説。
アマゾンより引用
感想
最初から最後までグイグイ読めた訳ではなくて、途中なんだか理解不能な話が入ったりするのだけれど「つまらない文章」と「惹かれた文章」の比率からすると「惹かれた文章」の方がずっと多かったので良しとしたい。
なかでも人類滅亡について説教した神父の話とそのことについて語ったモーガンの解釈がとても良かった。
人は悲劇が大好きだから「人類滅亡」だなんて、他人も自分も巻き込んでゆくビッグな悲劇は好きなものだ……とか、人類滅亡ってのは大規模な心中と同じである……とか。
人類滅亡を心中と考えたことはなかったけれど、みょうに納得してしまった。
そう考えると悪くない。別に今すぐ死にたい訳ではないけれど、大好きな人とも、死ぬほど嫌っている人とも、一緒に死んでいくのかと思うと、ちょっと面白いような気がするのだ。
自然の描写とあいまって、そういう宗教的な話が、みょうにしっくりくる作品だと思う。
ただ苦悩とか、そういう部分よりも、もっと大きな意味でのことばかりが書かれているので、青年の理想というか、ちょっと青臭い感じがするのも事実なのだが。
藤原新也の作品は、たまに読むのにいいかも知れない。他ではあまり見かけない独特の世界である。