題名のとおり「人形」をキーワードにした恐怖小説だった。
「人形」というよりも「人形師」の方が主かも知れないが、人形好きなら楽しく読めるのではないかと思う。よく出来てた小説で面白く読めたが、ちょぴり物足りなさを感じた。
ドールズ
仙台で個展を開いていた創作折り紙の第一人者・華村研は、何者かが江戸期の手法で見事に折り上げた“紙の蜻蛉”を会場で見つける。
その夜、弟子の女性が殺され、現場にはまたも紙の蜻蛉が落ちていた。華村を凌駕するほどの技の持ち主は誰か。
彼が探し当てたのは、八歳の無邪気な少女・怜だった。しかも怜の身体には、江戸の天才人形師・泉目吉が甦っていた―。
アマゾンより引用
感想
小池真理子が解説している通り「健全」な恐怖小説なのだ。破綻した部分や、後ろ暗い部分がなくて「しっかり組み立てられた小説」なのだ。
ある意味において素晴らしいと思うのだけど、一読者としては肩透かしを喰らったようなガッカリ感が残ってしまった。
ぶっちぎりで気持ちの悪い小説が好きだという訳でもないが、あまり健全だと話に溺れることが出来ないというか。
登場人物も、みなそれぞれに筋の通った小市民で、ホラー小説にありがちな「あっちの世界に行ってしまったクレイジーな人」もいた方が華やかで良いんじゃないかと思ったり。
この小説は健全過ぎて物足りなくあるのだけれど、物足りなさの分だけリアリティはあったように思う。
「ありえない話」ではなくて「もしかしたら起こりうるかも知れない話」と思わせてくれたのだ。怖さにリアリティを求める読者向けの小説なのだと思う。
私はどちらかというと、ぶっ飛んでいて派手なホラーか、クレイジーな人間が登場するホラーが好きなので、イマイチ楽しめなかった。
ただ、ホラー小説における1つの方向性としては良いかも知れないとは思った。
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