世間的には評価の高いのある作品だと聞いているけれど私の中では、どうにも受け入れ難い作品だった。
若い頃に愛し合っていたのに、事情があって結婚できなかった男女が五十の坂を過ぎて、ふたたび愛し合う……という不倫物だった。
不倫物だから受け入れられなかったという訳ではなくて2人の愛に潔さのようなものが、私には感じられなかったのである。
風の盆恋歌
死んでもいい。不倫という名の本当の愛を知った今は――。
ぼんぼりに灯がともり、胡弓の音が流れるとき、風の盆の夜がふける。越中おわらの祭の夜に、死の予感にふるえつつ忍び逢う一組の男女。
互いに心を通わせながら、離ればなれに20年の歳月を生きた男と女がたどる、あやうい恋の旅路を、金沢、パリ、八尾、白峰を舞台に美しく描き出す、直木賞受賞作家の長編恋愛小説。
アマゾンより引用
感想
文章も上品で「風の盆」という祭りを軸にしたシュチュエーションは素敵だったが愛し合う2人の姿勢に、どこか言い訳めいたものがあるような気がして「好きになってしまったら、仕方がないよね」という気持ちになれなかったのだ。
むしろ「こんな経緯があったのだから、こんな成り行きも仕方ないよね」と言うような、逃げ場的な要素を感じてしまったのだ。
人間って生き物は、そうそう強くは生きられないだけに逃げ出したい時もあれば、本気で逃げ出してしまう時もあるだろう。
そんなマイナスの感情が恋に直結することもあるとは思うのだが、なんとなく祝福したり、受け入れられないような気がしたのだ。
たとえ、これが逃げ場的な恋愛だったとしても10代や、20代前半くらいの年齢でする恋愛であるならばそれなりに納得できたのかも知れないけれど。
ただ、そういう類のネガティブな恋愛というのも、ある種の味わいと言えなくもないように思ったりもする。
私がこの作品を気持ち良く読むには、年齢の重ね方が足りないのかも知れない。もう少し、色々な経験をした上で読んでみたなら違った感じかたが出来るのかも……
美しいタイトル、美しいシュチュエーションだけに期待して読んだのだが、どうにも後味の悪い1冊だった