先の三連休に『アメリカン・スナイパー』をレンタル視聴した。
『アメリカン・スナイパー』は実在した米海軍特殊部隊ネイビー・シールズの元隊員クリス・カイルの自伝『ネイビー・シールズ最強の狙撃手』(原書房)をクリント・イーストウッドが映画化した作品。
公開当時は「戦争を賛美したいる映画だ」とか「アメリカ至上主義だ」とか「いやいや。反戦映画だ」と様々な議論があったらしい。
私は戦争映画はそこそこ観る派なので、ずっと気になっていたのだけれど、ようやく観る事が出来た。
今回の感想はネタバレ込みで書くので、ネタバレNGの方はご遠慮ください。
アメリカン・スナイパー
アメリカン・スナイパー | |
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American Sniper | |
監督 | クリント・イーストウッド |
脚本 | ジェイソン・ホール |
原作 | クリス・カイル『ネイビー・シールズ最強の狙撃手』(原書房) |
製作 | クリント・イーストウッド ロバート・ロレンツ ピーター・モーガン アンドリュー・ラザール ブラッドリー・クーパー |
出演者 | ブラッドリー・クーパー シエナ・ミラー |
そもそも「ネタバレ込みです」と書いてみたものの、主人公は実在の人物、クリス・カイル。
クリス・カイルは「イラク戦争」でイラク武装勢力から「ラマーディーの悪魔」という異名で恐れられた狙撃手。
アメリカ人からするとクリス・カイルは「レジェンド」との事なのでネタバレ云々の話ではないらしい。
感想
この映画の感想はとりあえず「戦争怖い」ってことに尽きる。
同じくアメリカの戦争映画『ローン・サバイバー』を観た時も同じことを思ったけれど、核兵器だの化学兵器だの長距離弾道ミサイルだのが開発される現代でも「歩兵戦」は現役で、結局のところ人間が人間を殺していくのが戦争なのだと思い知られる。
『ローン・サバイバー』の場合は「戦争屋の戦争」と言うイメーシが強かったけれど『アメリカン・スナイパー』の場合、子どもを殺す場面もあるため、描写としては『ローン・サバイバー』よりもずっと残酷だと言える。
ただ「子どもを殺す」と言っても、丸腰の子どもを殺す訳ではなくて、子どもと言っても武器を持って味方を攻撃してきたため「やむを得ず射殺する」って感じではある。
実際、イスラム過激派の人達は子どもでも自爆テロに使ったりするし、子どもの兵士もいる。
日本人の感覚からすると子どもを殺したり、子どもが残酷な方法で殺されたり(これはアメリカ兵ではなくイラク人同志の殺し合い)する場面は相当キツイ。
戦場パートと家族パート
『アメリカン・スナイパー』はザックリと2つのくくりに分ける事が出来る。
『戦場パート』と『家族パート』だ。
クリス・カイルは戦場では凄腕の狙撃手だけど、妻も子もいるアメリカのお父さん。
クリス・カイルは普通の夫、普通の父であると同時に兵役中は身も心も完全に戦場に持っていかれていて、妻から「存在は感じても、あなたの心がここにない。」と泣かれている。
酷い話だけど、映画を観ていると「そりゃ無理だよね…」と思ってしまった。
身も心もギリギリの状態で命のやり取りをしている戦場に長くいて、普通の感覚で生きていくなんて無理な相談。
戦争とそれ以外の事を混ぜて考えるのは不謹慎かも知れないけれど、過労死寸前で働いている日本のお父さん達にも通じる物があるかもな…なんて事を思ったりした。
戦場から帰還した兵士のPTSDについては、アメリカだけでなく日本にもあった訳で有吉佐和子は『針女』でPTSDで人格が変わってしまった青年を登場させている。
『アメリカン・スナイパー』の中で、主人公クリス・カイルはどうにか立ち直って(実際のクリス・カイルについては知らない)家族との穏やかな生活に戻っていく。
立ち直ったクリス・カイルはPTSDに悩む帰還兵や退役兵の支援活動をはじめるのだけど、退役軍人社会復帰プログラムで支援していたPTSDの青年に射殺され、葬儀の場面で映画が終わる。
戦争と人間を淡々と描いた作品
『アメリカン・スナイパー』は賛否のある作品とのことだけど、私は戦争を賛美している訳でも、反戦映画でもないと思っている。
戦争と人間(家族)を淡々と描いていたのではないかな…と思う。
実際に観るまでは「伝説の狙撃手スゲ~」みたいな映画かと思っていたけれど「カッコイイ」的な部分は意外にも控えめだった。
「是非オススメします」と言うような映画ではないけれど、名作であることに間違いない。
「面白い作品」と言うよりも「考えさせられる作品」。観て良かったと思う。