『女神記(新・世界の神話)』は題名からも分かるように日本神話をモチーフにした創作小説。
イザナミ、イザナギの国作りと愛憎、とある南の島の理不尽な風習とその風習に翻弄される男女の物語。男女の…と言うよりも「女の」と言った方が良いのかも知れない。
女の恨み節を延々と聞かされる作品だった。
女神記(新・世界の神話)
遥か南の海蛇の島、二人の姉妹。姉は大巫女を継ぎ、島のために祈った。
妹は運命に逆らい、掟を破った。16歳で死んだ妹は、地下神殿で黄泉の国の女王イザナミに出逢う。
物語の鬼神が描く、血と贖いの日本神話!
アマゾンより引用
感想
ものすごい恨み満ちた物語で、軽く辟易してしまった。
桐野夏生って人は「女」が好きなのか嫌いなのかよく分からない。好きだからこそ男への恨みが迸ってくるのか、それとも嫌いだから女の業を描かずにはいられないのか。激しく謎だ。
そして毎回不思議に思うのは、この人の描く「母」がたいてい酷い母親であるって事実。もちろん、全ての作品に当てはまるとは言わないけれど。
私自身、1人の子の母親なのだけど、そういう視線で読むと「そりゃ、ないわ」としか思えないような母親がよく登場する。
この作品に出てくる女達も子を産む母なのだけど、なんだかなぁ……な感じだった。
状況的に見て気の毒とは言うものの「母」の部分よりも「女」の部分が強い女達には共感が持てない。
桐野夏生の作品だけでなく、小説に出てくる女達は「母」でなく「女」であることが多い。
その方が物語は面白く転がるので、それはそれでアレなのだけど、この作者の描く女は血の滴る生肉を手掴みで貪っていそうな、野性的な女が多くてゲンナリしてしまうのだ。
作品自体はそれなりに面白かった。流れるような文章で「ノリノリで書いていたんだろうなぁ」と想像してしまった。
ザザーッっと、いっき読みするには良いかも知れないけれど、心に残るような話でもなければ再読したいような話でもない。
理不尽と不条理を描くのが好きな桐野夏生らしい作品だなぁ……と思った。