桐生操む作品って、けっこうなブームがあって、私も勢いにまかせて浴びるほど読んだ覚えがある。
それなのに読書録にはこれを含めて2冊しか書いていない不思議。
しかし今回も安定の面白さだった。
悲劇の9日女王 ジェーン・グレイ
英国王冠を押し付けられた美貌の少女を待ち受ける過酷な運命とは……?
1553年、エドワード6世の跡を継ぎ、少女ジェーン・グレイが意に沿わぬ英国王冠を戴いた。権力闘争に明け暮れる男たちと、王位を奪還せんとするメアリ1世――人々の思惑に翻弄されたジェーンはついに……。
アマゾンより引用
感想
「感動の嵐」とか「人生感が変わる!」とか言うタイプの作品ではないけれど、無難に面白いと言うか、期待を裏切らない面白さと言うか。
もしかしたら世界史に通じている人にはツマラナイ作品なのかも知れないけれど、世界史に疎い人間にとって、作者の作品はどれもこれも面白い。
この作品は題名通り、たった9日間しか王位にいなかったイギリス女王の物語。
こんな人がいたなんて、ちっとも知らなかった。
ドラマティックな話だろう事は題名から容易に想像出来るのだけど、物語としての面白さもさる事ながら、ヒロインのいじらしさにグッっときてしまった。
歴史の表舞台に出てくる女性って、ガッツのあるタイプが多くて、なんだかんだ言って華やかな印象を受けるのだけど、この作品のヒロインは吃驚するほじ地味子なのだ。
テンプレヒロインを肉食獣とするならば、この作品のヒロインは完全に草食獣。だが、それが良い。そこが良い。
地味で真面目で一生懸命。しかも、そんな娘さんが陰謀に巻き込まれてわずか16歳で処刑されてしまうのだ。面白くない訳がない。
私は根っからの日本人なので滅びの美学的な魂があるらしく、こういう話には滅多弱い。
たとえ歴史的にどうあろうと「やっぱり義経を応援しちゃうよね?」とか「新選組っていいよね」とか「赤穂浪士の討ち入りにはグッっとくるよね」とか、そんな感じ。
物語として読む悲劇は良い。自分の身に降り掛かってくるのはゴメンだけれど。
エンターテイメントとして、読み物として満足の出来る作品だった。
好みが分かれそうなので誰にでも勧められないけれど、滅びの美学にグッっとくる人には是非とも読んで戴きたいと思える1冊だった。