村田沙耶香はここ数年来、私の推し作家なのだけどエッセイ集は初挑戦。
小説家のエッセイ集を手に取る時って、毎回ちょっとドキドキする。
面白い小説を書く人のエッセイだからって、面白いとは限らないのだ。私は小説とエッセイはまったく別物だと思っている。
となりの脳世界
デビューから現在まで各紙誌に書いてきたエッセイを一冊にまとめた決定版。
小さな頃の思い出から、影響を受けた本や音楽、旅先での出来事、今まで気づかなかった勘違いに、コンビニバイトのこと。
Twitterで話題の『「走らせている人」たち』も収録!
アマゾンより引用
感想
どんなに人気作家だったしても「ちょ…このエッセイ、面白くないんですけど?」と思う事って意外と多いし、逆に人気のエッセイストが小説を書いたからと言って面白い小説になるとは限らない。
例えば。私はわかぎえふのエッセイは大好きだけど、彼女の書く小説は正直微妙だと思っている。
なので好きな小説家のエッセイを初めて読む時は「全く面白くなかったらどうしよう…」みたいな不安がつきまとうのだけど、村田沙耶香のエッセイは小説から想像していた世界そのままの面白さで、良い感じでクレイジーで面白かった。
久しぶりにエッセイを読んで「この人とお酒を飲んで語り合いたい」と感じてしまった。たぶん、村田沙耶香となら色々な感覚を分かち合える気がする。
新聞や雑誌に掲載したエッセイをまとめたもので、1つ1つのエッセイは短め。
村田沙耶香の小説って、ぶっ飛んだ設定だったり、主人公がイカれていたりする事が多いのだけど「ああ…なるほど。こういう嗜好の人だから、あんな作品が書けたんだねぇ」と、いちいち納得させられてしまった。
- 小説家らしい独特の感性
- にじみ出る人付き合いの苦手感
- いちいち不器用で生き難そうな感じ
- でも真面目。超真面目。
どのエピソードからも村田沙耶香の人となりを感じる事が出来て、ファンとしては好感が持てた。特に『お風呂の中で水を飲むこと』と『宝物の棒の思い出』の2つについては私自身の思い出と重なるところがあって、グッっときてしまった。
私は個人的に面白いと思ったのだけど、万人向けではないように思う。人によっては「不思議ちゃんの書いた謎の文章」と思うかも知れない。
個人的には面白かったけれど「村田沙耶香にはやっぱり小説を書いていて欲しいな」と思ってしまった。
エッセイも悪くはないけど、小説ほど掘り下げる事が出来ないのが物足りないのだ。キレっ切れな長編小説での新作を期待している。