私の住んでいる地域では世代交代が上手くいっておらず、勢い良く高齢化が進んでいる。
ご町内では最近まで娘が最年少の子どもだった。最年少の娘はすでに10歳。娘が乳幼児期に遊んでくれた子ども達は大学生だの、高校生だのになっている。そんなご町内に最近、5歳、3歳の姉妹と両親が引越してきた。ご町内的には貴重な子どもだ。
姉妹とそのご両親は「おじいちゃんと同居するため」にやって来た。
昨年、おばあちゃん(奥さん)が亡くなって、おじいちゃんが1人ぼっちになってしまったため、娘さん夫婦が同居することになったらしい。亡くなった奥さんは優しい人で私も娘も随分お世話になった。
先日、姉妹とその母親が家の前にビニールプールを出して水遊びしていた。水遊びと言っても日差しがキツく、小さな日傘をいくつかさして日陰を作っているのを見て、ふと自宅の倉庫にビーチパラソルが眠っていることを思い出した。我が家もかつてはビーチパラソルの出番が多かったけれど、娘と成長と共に使わなくなり、ここ数年間使っていない。
私は姉妹の母親とは全く面識がないのだけれど、ビーチパラソルを担いで訪ねて行った。
- 私は怪しいものではなく同じ筋に住んでいる○○と言う者です。
- 良かったらビーチパラソル使ってもらえませんか?
- うちはもうビーチパラソルは使わないので遠慮は無用です。
子ども達は大喜びしていたけれど、若い母親は困惑気味だった。そりゃあ、そうだろう。見ず知らずのオバチャンがビーチパラソルを抱えてやって来たってどうして良いか分からないと思う。
- 私にも娘がいて、亡くなったお母さんに可愛がって戴いた。
- その時のお返しって訳ではないけれど、ホントお気遣い無用です。
ここまで説明して、若い母親は納得してくれたらしい。そして自分の母親が私の娘を可愛がってくれていた事も知っていたらしく「あっ…そう言えば…」と、娘と私のことを思いだしてくれた。その日以降、我が家が使っていたビーチパラソルは可愛らしい姉妹が毎日水遊びをする時に使ってくれている。
私はどちらかと言うとコミュ力の高い方ではなく、自分から働きかけて何かするのは苦手なタイプだ。それなのにビーチパラソルを担いで行って初対面人に押し付けてくるなんて、自分でもビックリしてしまう。
これは私が近所の人達からしてもらった事をそのまま返しているだけに過ぎない。特に娘が小さい頃は年配の方たちから良くして戴いた。当時は「引っ越ししてきたばかりでよく知らない私達家族に、この人達はどうしてこんなに親切にしてくれるんだろう?」と不思議に思っていたけれど、今ならその理由が分かる。
当時、私達家族に親切にしてくれていた人達もまた、子育てをしている時に何某かの親切を受けていたのだろうな…と。
昨今は「今の日本は子育て世帯に厳しい」と言う話題が多くて嫌になるけれど、私は年配の人達から随分と親切にしてもらったし、私もそれを繋いでいけたらいいな…と思う。