前回読んだ『あひる』が良かったので手に取ってみた。
芥川賞候補作。『あひる』を気に入っていたものだから「あの作品を書いた人が書いたのなら面白いに違いない」と思って読んだのだけど、それほど面白くもなかった。
芥川賞の候補作止まりだと言うのも頷ける。
星の子
主人公・林ちひろは中学3年生。
出生直後から病弱だったちひろを救いたい一心で、両親は「あやしい宗教」にのめり込んでいき、その信仰は少しずつ家族を崩壊させていく。
第39回 野間文芸新人賞受賞作。
アマゾンより引用
感想
新興宗教にハマっている両親に育てられた子どもが主人公の成長小説。
両親が新興宗教にハマったのは幼い頃、主人公は身体が弱くアトピーを患っていたのがキッカケ。新興宗教のおかげでアトピーが回復したと思い込み、どうしようもないほどのめり込んていく。
主人公は新興宗教にハマる両親を見て成長し、主人公の姉はそんな両親に反発して家出してしまう。
私は新興宗教に深く関わった事はないけれど、読んでいて胸が痛くなってしまった。私感に過ぎないのだけど、新興宗教にハマってしまう人って「いい人」が多い気がする。
宗教上等の理由から、新興宗教にハマってしまった人とは知り合う事はあってもそれ以上の関係には発展しない。ただ彼らは「良かれ」と思って自分の信じる宗教を勧めていて、傍から見ると「目を覚ましなよ。完全に騙されてるって!」としか思えないのだけど、大抵の場合どうする事も出来ない。
新興宗教にハマる両親と信仰を否定する事も肯定する事も出来ない主人公が丁寧に描かれていた。
ただ、長編小説としてはこれだけだと力弱い感じ
。短編か中編で充分なボリュームでダラダラ感が半端ない。芥川賞が取れなかったのも納得した。前回読んだ『あひる』は短編の良さを生かしていたと思うのだけど、この作品はまったく逆で長さを生きしきれていない。
主人公の成長小説なのか、信仰小説なのか、新興宗教の不気味さを全面に出したかったのかがブレていたのも問題だと思う。
どれもこれもが中途半端で消化不良気味。テーマがテーマなだけに、この軽さは致命的だと思う。
それでも私は作者の文章とか人物描写は好みなので別の作品は読んでみたいと思うし、とりあえず次の作品に期待したい。