先日、野暮用があって市の外れ（自転車で30分)へ出掛けた。
同じ市内と言っても自分の生活と関わらない場所の事は意外と知らないものだ。途中、スマホで何度も道を確認しながら目的に辿り着いた。用事を済ませて「ちょっとスーパーに寄って、うどん玉を買って帰ろう。
賞味期限が迫ってる納豆があったから、納豆とオクラと温泉卵で冷やしうどんでも作ろうかな…」などと、昼食の事を考えながら帰路についた。
…と。途中で１軒の鰻屋さんを発見した。そこは「市内で１番鰻が美味しい店」と評判のお店だった。
私の住んでいる市は都会と違って外食出来るお店が非常に少ない。ロードサイドにファミレスやチェーン店はあるけれど「老舗」となると限られてくる。
なので店の名前を見た瞬間「あ。噂に聞くあの店だ」とピンときた。
すると。その鰻屋さんを目指す一行が現れた。いかにも偉そうな感じのサラリーマン４人組。
彼らは談笑しながら鰻屋さんに吸い込まれていった。お昼前なのだし昼食に鰻を食べるのだろうけれど、私が住んでいるようなパッとしない街で、ものすごく高い鰻を昼食に食べるサラリーマンがいる事に衝撃を覚えた。
これが都会なら何も思わなかったのだろうけれど、自分で言うのもなんだけど、決して高級なお土地柄ではなく、実に「パッっとしない街」ってところがポイント。
そんな街でもお昼ご飯に鰻を食べるような人がいるのだなぁ…と、つくづく感心してしまった。
夜、帰宅した夫にその話をしたところ「それ、接待なんじゃない？ 白蓮さんも食べてきたら良かったのに」と言われてしまった。
簡単に「食べてきたら良かったのに」と言われても、食べくる訳ないのは夫だって承知の上だ。そして夫はさらに言った「たまには贅沢したら？」と。
確かに高いと言っても宝石とかブランド物のバッグとかではない。たかが鰻なのだ。
出して出せない事もない。だけど私が言わんとするのはそうじゃないのだ。
「最近、ちょっと暑くなったよね。元気つけたいしお昼に鰻でも食べようか？」くらいのノリで昼食に鰻を選択する事が出来る人間になりたい…って事なのだ。
「清水の舞台から飛び降りる覚悟で鰻を食べる」とか、私の望んでいる理想の形じゃない。
鰻屋さんに吸い込まれていくサラリーマン達を見て「私もお昼に鰻を食べる事が出来る人間になりたい」と猛烈に思った。
私は在宅で仕事をしているのだけど「パートのおばちゃんくらい」程度の収入しかない。「お昼に鰻を食べることが出来る人間になる」でなんて、それこそどうやったらいいのか想像もつかない。お昼に鰻。手が届きそうでいて、それは遥かに遠過ぎる。
人生、まだまだ先は長い。
是非とも死ぬまでにお昼に鰻を食べることが出来る人間になりたいものだな…と思う。
