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静かにしなさい、でないと 朝倉かすみ 集英社文庫

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なんだかんだと文句を言いながら、朝倉かすみの作品を読むのはこれで5冊目。

激烈に好きって訳ではないのだけれど、たまに「おっ。いいな」とか「これは1本取られたな」と思う時があって、その瞬間が気に入っているのだと思う。

イマイチ本も多いのだけど「次は当たりかも知れない」と思うと、たまに読んでみたくなるのだ。前回は長編だったけれど、今回は短篇集。

朝倉かすみは短篇の方が断然面白いと思う。

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静かにしなさい、でないと

人間の哀しみと狂気を描く珠玉の短篇集

華やかな名前と地味な容姿とのギャップに昔から悩んでいた恵里伊は、小学校の同級生と再会して……(「内海さんの経験」)。自らの限界に直面してもがく人々の、哀しみと狂気を描いた連作短篇集。

アマゾンより引用

感想

この短篇集に登場するのは自分に自信の無い独身女性率がやたら高い。すごく嫌な感じの短篇集だ。しかし上手い。

私自身「そちら側」の人間だったからよく分かるのだけど、女性は男性以上に「見た目」で判断されがちだと思う。

それだけに見た目に自信の無い女性達は多かれ少なかれコンプレックスを持っている。この短篇集に登場する女性達はコンプレックスの塊と言ってもいい。

かなりデフォルメしているので「ここまで酷い人は珍しいんじゃない?」と思う部分もあるけれど、彼女達はの行動や心情は自分自身のそれだったり、職場で一緒に働いている人だったり、ともかく「身近にいる誰か」そのものだ。

特に面白かったのは自分がブスだと自覚しているモテない主人公と、主人公とは年の離れた美人の従妹が登場する『しずかにしなさい』。

主人公の従妹は主人公がお見合いをして断られた男性と付き合っていて、さらに金持ちの爺さんと付き合っている……と言う設定。

金持ちの爺さんは脱税で週刊誌に取り上げられるほどお金持ち。従妹は美人で男性なんて選び放題だと思われるのに「よりによって」パッとしないオッサンだの、爺さんだのと付き合うのだ。

主人公は従妹を理解出来ないのだけど、従妹は恋人の事を「カワイイ」「けなげだ」と言う。この作品を読んで私自身、腑に落ちる物があった。

「モテる女性って男性を受け入れる器が大きいんだな」と。

私が男でも自分を値踏みする主人公よりも、美人で自分を許容してくれる従妹を選ぶ。作者は女を描くのがとても上手い。

後味の悪い話で好きか嫌いかを問われたら「嫌いかも」と答えてしまうようなタイプの話なのだけど『ちがいますか』と言う作品もインパクトがあった。

三姉妹の長女で、妹がそれぞれ喘息と斜視だったため、親から愛情を受けずに育った長女が主人公の物語。

姉妹をテーマにした作品って、ハートフルなものよりも、コンプレックスとか恨みがちな作品の方が印象に残ってしまうのは何故だろう。

漫画で言うと山岸凉子は姉妹設定を好んで使うけれど『ちがいますか』の三姉妹もなかなかのものだ。読んでいて絶望的な気分になってしまった。

よほどの美人か、輝かしい人生を歩んできた女性には分からないかも知れないけれど「ほどほど」に育った人なら多少なりとも共感するところはあるのではないかと思う。

朝倉かすみの上手さはストライクゾーンを広めに設定しているところにあると確信した。

どの作品も「上手いなぁ」と思える粒ぞろいだったけれど、落ち込んでいる時に読むのはオススメしない。

1つの作品をのぞいて、どれもこもも後味が悪い。

もし読むとしたら、心身ともに大丈夫だと思える時に読んでいただきたいと思う。

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