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おもろい以外いらんねん  大前粟生 河出書房新社

大前粟生は初挑戦の作家さん。『おもろい以外いらんねん』は漫才師とその友人、3人の若者を描いた作品で、巷で評判が良さそうだったので図書館で予約して読んでみた。

  • 誰も傷つけない笑い
  • コロナ禍に翻弄される漫才師

……みたいな煽り文句で宣伝していたので興味を持ったのだけど、私が思っていた方向性とは随分と違っていた。

今回ネタバレ的なところも書くのでネタバレNGの方はご遠慮ください。

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おもろい以外いらんねん

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ザックリとこんな内容
  • 幼馴染の咲太と滝場、高校で転校してきたユウキ。お笑いが好きな3人の青春と挫折の物語。
  • 滝場とユウキはお笑いコンビ、馬場リッチバルコニーを結成するが咲太はホテルマンの道へ進む。
  • コロナ禍の中、馬場リッチバルコニーは本来目指していた漫才ではなく、違う形でブレイクすることになるのだが…

感想

むむむ。この売り方はどうなんだろう?

『おもろい以外はいらんねん』は出版社の煽り文句からして「漫才に本気で取組む若者がコロナ禍に翻弄される物語なのかな?」って想像したのだけど、なんかちょっと方向性が違っていた。

漫才師が主人公でコロナも登場するけれど、漫才云々…よりも悩める若者の青春小説だった。巷では絶賛されいるようだけど私は正直苦手なノリ。

まず漫才のト書きが多いのだけど、漫才の台本って読んでみたところで面白くない。漫才は漫才師が喋るから面白いのであって活字で読んでも、なんだか寒い。

物語のメインになる馬場リッチバルコニーはコロナ禍の中、注目されはじめるのだけど、漫才を認められた訳でもコンビが認められた訳でもなく、滝場の一発ネタが受けたのがキッカケ。

漫才コンビで片方だけが注目されると相方とギクシャクしていくのは当然のことで「コロナ禍」はまったく生かされていない。

  • アクリル板を挟んでの漫才
  • 無観客での漫才の難しさ

……あたりは出てくるものの、逆に言うとそれしかコロナの要素はなかった。

そしてもう1つの宣伝の柱であるかと「誰も傷つけない笑い」云々については、ちらっと登場るものの、物語の主軸になるものではなく、宣伝があまりにもこじつけ過ぎる。

『おもろい以外いらんねん』は漫才云々よりも、3人の友情とすれ違い、成長を書いた作品だと思う。

そもそも3人組っていうのは、何かにつけて1人余る。

お笑いの道に進まなかった咲太の鬱屈とした思いや馬場リッチバルコニーとしてコンビを組んだものの、いつしか見つめる向きが違ってしまった滝場とユウキのギクシャクした関係を追っていく方が楽しめると思う。

そして『おもろい以外いらんねん』は自分探しをする若者の姿を描いた作品でもある。滝場とネタ合わせをしている時にユウキが言った言葉は漫才論でもなんでもなくて、完全に自分探し的なノリ。

「おまえは自分がカラッポなことがこわいねん。それで不安やから笑いを生もうとして、笑いを生めば生むほどカラッポになってくんねん。それがおまえにはきもちええねん。おまえはおまえの好きでカラッポになってんねやから無理して抵抗すんな。無理して泣いたりすんなや。おもろい以外いらんねん」

要するに3人の中で1番調子が良くて芸人らしい雰囲気のある滝場は実のところ心に闇を抱えいた…ってことなのだけど、漫才ドラマを期待して読んだので「お…おぅ」みたいな気持ちになってしまった。

『おもろい以外はいらんねん』は漫才師の若者を描いた作品として読むのではなく、自分探しをする若者の成長小説として読むならアリだと思う。

残念ながら私の場合は、題名と煽り文句から「漫才師の激アツなドラマに違いない」と思い込んで読んでしまったためイマイチ楽しむことができなかった。予備知識ゼロの白紙の状態で読んでいれば、もしかしたら感想が変わったのかも知れないな…と思うと残念でならない。

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白い木蓮の花の下で
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