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映画『落下の王国』感想。

4.0
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2008年に公開された映画『落下の王国』が17年の時を経て4Kデジタルリマスター版でリバイバル上映されていると知り映画館へ足を運んだ。

『落下の王国』は配信もなければBlu-ray/DVDも廃盤になっていて映画ファンの間でも長らく幻の作品となっていた作品。私も公開時に見たいと思っていたのだけれど、育児に追われている時期で観ることが出来なかったため、今回の再上映は見逃す訳にはいかなかった。

「観たい!」と前のめりな人が多かったらしく、ミニシアター系の映画館は満席で人気のほどが伺えた。

今回、軽くネタバレを含むのでネタバレNGの方はご遠慮ください。

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落下の王国

落下の王国
The Fall
監督 ターセム・シン
脚本 ダン・ギルロイ
ニコ・ソウルタナキス
ターセム・シン
製作 ターセム・シン
製作総指揮 アジット・シン
トミー・タートル
出演者 リー・ペイス
カティンカ・アンタルー
ジャスティン・ワデル(英語版)
ダニエル・カルタジローン(英語版)
音楽 クリシュナ・レヴィ(英語版)
撮影 コリン・ワトキンソン
編集 ロバート・ダフィ
公開 日本  2008年9月6日
上映時間 118分

あらすじ

物語の舞台は1915年のロサンゼルス。無声映画のスタントマンだったロイ・ウォーカーは、撮影中に大怪我を負い半身不随となった上に、恋人を主演俳優に奪われ、入院先の病院で自暴自棄になっていた。

そんなとき彼の病室に現れたのは家族を手伝ってオレンジの収穫をしていて木から落ちて腕を骨折して入院していた移民の少女、アレクサンドリアだった。

ロイは動けない自分に代わって自殺するための薬を盗んで来させようと思い退屈を持て余しているアレクサンドリアに取り入るために、作り話を聞かせ始める。

それは一人の悪者のせいで愛する者や誇りを失い深い闇に落ちた6人の勇者達が力を合わせて悪者に立ち向かう壮大な愛と復讐の物語。

しかし少女を操るためのたわいもない作り話はいつしか少女に希望を与え、やがてロイ自身も救う物語となっていく。

圧倒的な映像美

『落下の王国』は監督のターセム・シンが26年かけて構想し、世界各地の「見たことのない絶景」を集めて撮影された。「映えスポット」の集大成と言っても良い。ちなみに撮影された場所はこんな感じでインドが多めではある。

ロケ地はざっとこんな感じ。(これがすべてではないけど)

  • タージ・マハル(インド): 白い大理石の霊廟と周辺
  • アグラ城(インド): タージ・マハルを遠望できる赤砂岩の要塞
  • チャンド・バオリ(インド): 幾何学的な階段が続く階段井戸
  • ジャンタル・マンタル(インド): 巨大な天文観測施設
  • ウメイド・バワン宮殿(インド): 豪奢な内部空間が王宮
  • デッドフレイ(ナミビア): 枯れた木々と白い大地、赤い砂丘が広がる砂漠
  • ケープタウン(南アフリカ): 病院や周辺施設
  • ウブド(インドネシア): 緑豊かな自然と寺院群
  • グヌン・カウィ(インドネシア): 岩壁に刻まれた古代遺跡
  • バタフライ・リーフ(フィジー): 鮮やかな海と空
  • カレル橋(チェコ): 石像が並ぶ歴史的な橋
  • ボタニコ庭園(アルゼンチン)ベレン地区に位置する熱帯植物園
  • コロッセオ(イタリア): 古代ローマの象徴的遺構
  • ハドリアヌス帝別荘(イタリア): 広大な遺跡群
  • アヤソフィア(トルコ): 宗教と歴史が交錯する巨大建築
  • セーヌ川(フランス): シンボル的な自由の女神像のある場所

一場面、一場面が絵画のようで映像を眺めているだけでも楽しい。ちなみに映画のパンフレットには穴が2つ開けられていて「リボンを通して壁に飾ってね」と書いてあった。「写真として部屋に飾ってもらえる自信があります!」と言う製作側の強気な姿勢は嫌いじゃ無い。

私達が暮らしている世界はこれほどまでに美しかったんだなぁ…と再確認させられた。

繰り返される落下

『落下の王国』の原題は『The Fall』直訳すると「落ちる」ってこと。

実際、作品中には何度も何度も人間が落下する場面が映し出される。ロイはスタント中に落下しているし、アレクサンドリアはオレンジの樹から落下している。

ロイとアレクサンドリアが作り出した物語の中でも何人もの登場人物が落下している。何度も何度も人間が落下する映像が映し出されるので、高いところが苦手な方はちょっと嫌かも知れない。下品な言い回しで恐縮だけど男性が言うところの「玉ひゅん」って感覚だと思う。だけどむしろジャングルのてっぺんから飛び降りるのが好きだった系の人間には刺さると思う。私は飛び降りるのが好きだったので大丈夫だった。

ロイとアレクサンドリアが作り出した物語の中で「落下」が繰り返されるのはロイの自殺願望を表現していたのだと思う。ただし現実のロイは下半身不随になっていて自ら飛び降りることが出来なかったのだけど。

創作によって救われていく魂

自殺願望のあるロイは物語を破滅的な方向に導いていくのだけど、アレクサンドリアは「そんなの嫌だ」と断固拒否する。小さな女の子の意思の力によって物語が軌道修正されていく過程は観ていてとても気持ちが良い。ロイによって作り出された妄想の世界だったけれど、それはアレクサンドリアの物語にもなっていたのだ。

アレクサンドリアによってロイの魂が救われた…とも言えそうだけど、私はロイとアレクサンドリアが2人で創作することによってロイの魂が救われたのだと思う。どこかしら『ルックバック』と似ているな…と思った。『落下の王国』で作られた美しい世界はロイとアレクサンドリアのどちらが欠けても成立しなかった。

ロイとアレクサンドリアは友情で結ばれていた訳ではないけれど、魂が結びついたような関係だったと思う。

『落下の王国』は妄想の物語にも様々に仕掛けが仕込まれていて1度観ただけでは味わい切れないと思う。残念ながら2度目を観ることが出来なかったのだけど、出来ることなら復習してもう少し考えを深めてから感想を手直ししたい。そう思ってしまうほど素敵な作品だった。ちなみに『落下の王国』は現時点でも配信が無く、円盤は廃盤。中古市場で手に入れるしかないのだけど洒落にならないお値段なので観ることは叶わない。無念……。

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