読んだ本の『50音別作家一覧』はこちらから>>

生殖記 朝井リョウ 小学館

記事内に広告が含まれています。

2026年の感想1冊目は『生殖記』。題名を聞いて「もしかしたら、この作品って村田沙耶香の『世界99』の男性の主張的な作品なのかな?」と思って読んでみたいのだけど、想像とは違った方向性の作品だった。

朝井リョウは『正欲』でも人間の性に関するテーマを扱っているのだけど今回も似たり寄ったりの作品って印象を受けた。

新年早々、disり気味な感想になることを先に予告しておく。そしてネタバレも含むのでネタバレNGの方はご遠慮ください。

スポンサーリンク

生殖記

ザックリとこんな感じの作品
  •  家電メーカー総務部に勤める達家尚成が同僚の大輔と家電量販店で体組成計を買おうとしている場面から物語が始まる。
  •  物語の語り手は尚成自身ではなく、尚成の体内に宿る生殖本能。生殖本能は彼の言動と内面を観察し、語る。
  •  尚成は同性愛者として幼少期から周囲に擬態して生きてきた過去を抱ていた。
  •  生殖本能の観察は尚成の内面や過去の記憶を紐解き、職場や友人とのやりとりを経て生殖や寿命にまつわる選択と対峙していく…

感想

『生殖記』の主人公(語り手)は人間ではなく生殖本能。設定のユニークさに驚かされたし、掴みは最高に面白かった。性の問題を考える時に「なんだかんだ言って生き物の本懐は子孫を残すことではないか?」って部分は捨て置け無いところではある。

ちなみに私は結婚して子どもがいるけれど娘1人。夫と私は「子孫繁栄」と言う意味で考えると生き物としては出来悪い。子孫繁栄と言う意味で考えるならツガイは2人子を産んで赤点回避。3人以上産んで、ようやく「子孫繁栄」のラインに乗っかる…ってことになる。

ところが語り手である生殖本能が宿っている肉体、達家尚成は同性愛者だった。

朝井リョウと言えば『桐島、部活やめるってよ』でデビューした後、学校を舞台にした作品や大学生の就職活動をテーマにした作品などでヒットを飛ばしているけれど、どちらかと言うと「陽キャさん主体」の作品ばかり書いていたので、主人公が同性愛者だと知って困惑してしまった。「朝井リョウって同性愛者だったっけか?」と。

確かに『正欲』ではアブノーマルな性嗜好を持つ人が主人公ではあったけれど、正直「時流に乗っかって書いてみました感」が強くて個人的にはイマイチ好きになれない作品だった。

達家尚成の人物像にしても、彼の心の内にしても良く出来ている風ではあったものの「なんだか2ちゃんまとめサイト的な感じだなぁ」と感じてしまった。要するに「熱さ」とか「憤怒」のようなものが感じられなかったのだ。

時代を上手に切り取って文章化する能力って小説家に必要なものだと思うけれど、それだけじゃ足りない。村田沙耶香の『世界99』はイカれた内容ではあったものの、村田沙耶香の恨みつらみや世界に対する憤怒が滲みでていて凄みがあった。対して『生殖記』は綺麗にまとまっているものの凄みが足りないと感じた。

朝井リョウの作品は嫌いじゃないけど、表舞台の人間を書いた作品の方が良く出来ていると思う。むしろ小説を書く人って陰キャが多いので陽キャさんの世界を丁寧に描いた方が深い物が出来るのではないかと思う。

話題作ではあったけれど私の心には1ミリも刺さらない1冊だった。

朝井リョウの他の作品の感想も読んでみる

スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク
シェアする
タイトルとURLをコピーしました