『センス・オブ・ワンダー』は世界的大ベストセラー『沈黙の春』を書いたレイチェル・カーソンによる未完のエッセイ。未完と言っても小説のように起承転結がある訳ではないので「ちょっと…未完とか勘弁して。先が気になって仕方がない」なんてことにはならないので安心して読んで戴きたい。
Twitter(現X)の子育て界隈で「子育てママの必読書」みたいな感じで話題になっていたので読んでみた。読んでみてなるほど納得。ちょっと意識高い系の子育て母なら興味深い内容だ思う。
センス・オブ・ワンダー
- 『沈黙の春』で知られる海洋生物学者レイチェル・カーソンが、自然の驚きと感動を綴ったエッセイ。
- 自然の中での体験が子どもだけでなく大人の心にも「驚きの感性(センス・オブ・ワンダー)」を呼び覚ますと語る。
- 甥ロジャーとの海辺や森でのひとときから、日常にある自然の奇跡を見つめ直す視点を描く。
感想
『センス・オブ・ワンダー』の言わんとするところを、ひと言で解説すると「子どもは自然の中で育てましょうね」ってこと。それ以上でもそれ以下でもない。
「大自然の中で子どもの好奇心を育みつつ、子どもの感性を大切にして育てることはすっごく良いことですよ」みたいな話。レイチェル・カーソンの美しい文章とともに「子どもを自然に触れさせるって素敵だな」みたいなノリが話題になっていたのだと思う。
実際、日本でも幼児教育において「環境」は大事な要素とされていて、幼稚園や子ども園、保育園などでは子ども達が自然と関わることを大切にしているかと思われる。野山を駆け回り、動植物に興味を持って、空を見上げて不思議に気付くって素晴らしいことだと思う。
思う…のだけど、それはすべての子どもに当てはまるものではないし「外遊び大嫌いな子」もいれば「虫とか大嫌い」って子もいる。さらに突っ込むのであれば「自然の中で育てた子どもは賢く育つ」って訳じゃないことも付け加えておきたい。
確かにレイチェル・カーソンが彼女の甥にしたような子育ては理想的ではあるし、レイチェル・カーソンの甥は賢い子に育ったようだけど、そもそも彼女の家計は頭脳明晰な家系なのだと思う。
数年前「山の幼稚園」みたなのがテレビで取り上げられたことがある。園舎を持たずに山の中で子ども達と過ごす…みたいなスタイルで一時期話題になっていた。「これこそが理想的な幼児教育」って言う人もいたし、謎の信者もいたけれど、そこの卒園生達が小学校に就学した時、一般的な子ども達が出来ることが全く出来なくて大変なことになった…と言う話はあまり知られていない。
そりゃそう過ぎる話ではある。要するにバランスの問題なのだ。レイチェル・カーソンの提唱する子どもとの関わり方はある意味素敵ではあるけれど、それは大正義でも何でもない。「そういう経験が出来るのって素敵だね」くらいの受け取り方ならありだと思うのだけど。
育児書として『センス・オブ・ワンダー』を読むのはどうかと思ったけれど、とても美しい文章なので植物が好きだったり、鳥の観察が好きだったりするような人なら楽しく読める作品だと思う。短めなのでサクッと読めるし気になる方は是非ぜひ。