読んでいる最中に「あれっ。ありがとうござって、けっこう若かったんだっけ?」と思わず作者の生年月日を確認してしまった。
私にとって有吉玉青は有吉佐和子の娘さん…というイメージが先行していて、なんとなく「おばさん」だと思っていたのに、年長の友人と変わらないくらいのお年の方で吃驚してしまった。
有吉佐和子の年齢(すでに故人だが)を考えれば、そりゃそうか…とて、なるほど納得。現在活躍中の「いまどきの女性作家さん」と同じ年代の人だった。
エッセイがとても落ち着いた調子だったから、てっきり年輩の人だとばかり思っていたのに。
車掌さんの恋
それぞれの物語を乗せて今日も電車は走る――
いつの間にか乗務員室に入り込んできた女子高生に惹かれる車掌さん、思わず破いた中吊り広告でほほ笑むアイドルが取り持つ少年たちの友情、ボックス・シートでは居心地が悪い秘めた恋の2人、両親の不仲に心を痛めた優等生は改札で呼び止められて……
みんながいつも乗っている電車に詰まった5篇の物語。
アマゾンより引用
感想
肝心の作品は悪い意味で「今っぽい」感じだった。
恋愛にしても、何にしても一事が万事「なんとなく」な雰囲気で、どうにも思い入れることが出来なかった。なんか、こぅ……個性が無いのだ。
これは有吉玉青にだけ言えることでは無いのだけれど「いまどきの女性作家さん」って「この人独自の作風」とか「お得意のバターン」っのが無いような気がする。
どれも似たような雰囲気。本の表紙も題名もガツンと来るものが無くて、口当たりだけは良いのだ。
だけど実際に読んでみると、何も残らないことが多い。優等生な作品が読みたいんじゃない。多少破綻していても良いから、骨のある作品が読みたいのだ。
この作品は電車にまつわる短編集だったのだけど、どの話もどこかで聞いたことが…あるいは読んだことがあるようなネタばかりだった。
きっとすぐに忘れてしまうと思う。
非常に物足りなかったとしか言いようの無い1冊だった。